Profile千々和圭二(ちぢわけいじ)さん

1985年 八幡高校卒業(高37期)
1989年 北九州大学卒業
証券会社に入社
1991年 東芝システム開発(現:東芝デジタルソリューションズ)に入社
2013年 トレイルランを始める
2014年 初レース参加
2016年 頸椎ヘルニア・右腕骨折など怪我が重なり、1年間レース休止
2017年 トレイルランのレース3本(50km×2、33km×1)、ロードマラソン5本(ハーフ×3、フル×2)に出場

大学卒業後、証券会社に入社するが2年で退職。その後東芝システム開発(現:東芝デジタルソリューションズ株式会社)に入社し、技術企画として勤務する。現在は東北地区担当として仙台に単身赴任中。


2017年11月某日、トレイルランに果敢に挑戦する高37期の千々和さんをお尋ねし、トレイルランの魅力や始めたきっかけやこれからトレイルランを始める人へのアドバイスなどについてお話を伺いました。

そもそも、トレイルランって何ですか?

まずは、「トレイルラン」について教えてください。

トレイルというのは「未舗装」という意味なので「未舗装の道を走る」ということになりますが、わかりやすく言えば山道を走ったり歩いたりすることです。2009年にトレイルランの国内第一人者の方がテレビで特集され、『カッコイイ』『やってみたい』と人気に火がついたみたいですね。ここ最近は大会の数も増えて、日本国内だけでも年間200近くあります。距離は10km以下のものから最長は170kmまで。コースもバラエティに富んでいます。ロードマラソンとの違いは、距離とは別に累積標高、つまり登った高度を累計した指標があり、距離と累積標高と制限時間が大会難易度のバロメータになっています。160~170kmの大会だと制限時間は48時間前後、累積標高は9,000m前後、なかには10,000mを越すものもあり、単純にいえばエベレスト以上の高さを登っていることになります。それらに参加するエリートレーサーの人たちの身体能力はもはや人間とは思えないですね。160km以上の距離を寝ずに走り続けて24~30時間でゴールするわけですし。僕は2017年は距離50km・累積標高3000mの大会に2本、距離33km・累積標高2000mの大会に1本出場しました。


では、千々和さんがトレイルランを始めたきっかけは?

最初のきっかけは山登りです。2013年のゴールデンウィークに上司の方に誘われて御嶽山に行ったところ、景色が綺麗で楽しくて、そこからはまってしまい奥多摩近辺の山を登ってはちょこちょこフェイスブックに投稿していたら、高校・大学を通じての先輩(高35期)から「歩いてないで走れ」と言われ、「約束はできないけれど、走れるよう頑張ります」ということになり・・・。それからまずはロードを走り始めました。そして、約半年後の2013年11月には初めてフルマラソンに出場しました。それから山登りとランニングを楽しんでいたのですが、この頃からトレイルランが雑誌などでも取り上げられていて、海外のレースで活躍する格好いいトレイルランナーに憧れて、それから山を走り出しました。トレイルランを始める人は大体二通りで、山歩きから移行するケースと、ロードを走っていたけれど飽きたらず山に舞台を移すケース。40代以上が前者、20~30代といった若い人たちは後者のケースが多いようです。


普段から運動はされていたのですか?

全然!高校時代はバレー部、大学時代はサークルの仲間と軽くスポーツをやっていましたが、社会人になってからはたまにゴルフをやる程度。タバコも吸うし、休みの日はパチンコ、アウトドアなんか大嫌いという生活をしていました。ところが、山登りやトレイルランを始めたら、すっかりハマってしまい、タバコをやめ、食事にも気を遣うようになって。現在は仙台に単身赴任中なのですが、もちろん自炊で、朝は自家製スムージー、昼も弁当を作って、体重をコントロールしています。今や、トレイルランを中心に生活が回っていると言っても過言ではないかもしれません。


トレイルランの魅力とは?


生活を一変させるほどハマった魅力は何ですか?

なんといっても山の中を走り抜ける爽快感!そして自然との一体感!刻々と変わる景色もあって、何時間走っていても「飽きる」ということがないですね。人との接点も独特で楽しいです。大会1回あたりの参加人数がロードに比べて少ないので、走り始めてしばらくすると一人きりになる時間があります。まっ暗な山道をヘッドライトだけで走って、自分の息づかいしか聞こえない時間が結構長かったりするから、人を見かけるとホッとするし。ごくたまにだれかと一緒になることもあるんですが、そんな時はおしゃべりしながら走ったり。ロードレースでは考えられない風景がそこにあります。体は正直きついけれど辛いと思ったことはありません。きついけど、楽しいっ!って感じです。
エイド(エイドステーション:給水や給食を目的とする施設)も楽しみの一つ。普通のマラソンではゆっくり立ち止まって給水したりしませんよね。だけど、トレイルランのエイドでは、ほうとうやおかゆなど大会開催地域の特色ある食べ物が充実しているし、給水もコーラが置いてあったりします。ボランティアの人との触れ合いもあり、アットホームなところも魅力です。


トレイルランを始めてよかったことは何ですか?生活習慣以外で変わったことなどありますか?

日常生活でストレスがあまりなくなりました。トレイルランって競技ではあるけれど、あくまでも「山遊び」、非日常的な遊びの代表例みたいなものなんですよ。雨の中で、いい大人が泥だらけになりながら走ることもあり、子供に返ったように心の底から楽しめるからガス抜きができる。人に対しての垣根も低くなったと思います。山では知らない人にでも挨拶・声かけが当たり前なので、日常生活の中でも「知らない人に笑顔で挨拶」が今まで以上に自然にできるようになりました。
集中力もつきます。山道を走るので油断するとケガをしてしまう。足下に注意して次はどう足を運ぶかを常に考えながら走るから、ものすごく集中します。その集中力は日常にも生きていて、トレイルラン中心の生活になってから、仕事の効率も上がった気がします。


最後にこれからトレイルランを始めたい人、興味のある人へのアドバイス、メッセージを。

全くの初心者でも大丈夫ですか?気をつけることなどありますか?

「山を走る」ということは危険な行為でもあります。山は普通に歩いていても道迷いや滑落、落石など遭難が起き易い場所ですし、季節や天候によっては低体温症にも気をつけないといけません。そのため、必要となる装備や正しい使い方といった知識が必要になります。また山道は狭く、片側が崖になっているような場所で他人とすれ違うことが普通にありますが、そういう場所でも周りの方を押しのけるように走り続けるマナーの悪いトレイルランナーの存在も残念ながら少なくありません。そのためまずは山を歩いて登るところから始めて、山を楽しみながら山登りのマナーを理解していけば、と思います。また山でなくても公園の芝生を走ったりするのも立派なトレイルランです。ロードとは違う新鮮な世界が広がっています。都内だと砧公園や代々木公園、新宿御苑などがお薦めです。こういうところを楽しみながら走って体力、走力をつけていけばいいかなと思います。そのうえで自分の体力に見合った大会に参加して、大会の雰囲気を楽しんでみるのもいいでしょう。
非日常の時間、空間を持つとこれまでと人生、変わってきますよ。ぜひ、楽しんでください。


貴重なお話をありがとうございました。



【取材後記】

    • トレイルランでの必需品の多さにビックリ。なんでも5kgを背負って走るのだそうです。1リットル以上の水、食料(体重×8×レース時間-1500kcal分)、ブランケット、ライト、電地、ホイッスル、防寒ウエア、電車代・・・これでも少ない方らしい。さらに長距離の場合は簡易テントなどもあるそうです。食料や水に関してはエイドでカバーをするので最低限持っていくとのことです。
    • 健康的なイメージの千々和さんですが、実は大変な酒豪。取材日も焼酎4合瓶を3人で2本空けましたが、全く変わらず。脚力だけでなく胃袋の強さも一級でした。
    • 寒い中、トレーニングウエアでの屋外の撮影にも笑顔で対応してくださり、取材者カメラマンへの気遣いも忘れない。笑顔通りの爽やかな千々和さんでした。

 

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