高2期 安部健さんに聞く


今回は、ボランティア棋士をやっておられる高2期 安部健さんです。
渋谷のNPO法人・日本福祉囲碁協会に取材に行ってきました。ところどころにある解説は、同行して頂いた囲碁六段・藤城会長に教えていただきました。私は、まるっきり囲碁に触れたことがないので、漫画「ヒカルの碁」を読んで勉強?し、インタビューに行ってきました。

出生地と生年月日を教えてください、お幾つですか?

生まれたのは、枝光の日の出町3丁目で、昔は白川町と言っていました。本事務所からずっと山を登ったところにあり、桜ヶ丘という新興住宅地でした。町内は桜並木がきれいだったが、戦後、燃料用に切ってしまい、桜の木は、現在1本しか残っていません。山ノ口小学校卒業。昭和6年10月18日生まれで、現在80歳です。


関東に住むようになって何年くらいですか?

35年です。40歳台からで、それまでは銀行に勤めている関係で各地を転々としていて、12回引越ししました。3月31日決算の日に、お客さんのところを廻って、夕方銀行に戻ってくると、明日から大井町支店へ転勤という風に予告なしの転勤を繰り返していました。


八幡高校時代から囲碁をされていたのでしょうか?

いえいえ、始めたのは、銀行に入ってからです。宿直があり、黒崎の八幡支店からのスタートです。月に2~3度、同じ人と宿直があり2人で始められるものはないかと思ったのです。その頃は、卓球や野球くらいしか娯楽がなく、夜中に卓球をするわけもいかないですしね。部屋に、将棋盤と碁盤があったのですが、そこで、碁のほうがおもしろそうだと始めました。そのとき参考に買ったのは「高川格本因坊の本」です。二人でわけもわからず、始めたら、ある日、持碁(ジゴ)ができた。これは、センスがあるぞと、実力は他の人と対戦したことがないわけだから、皆目わからない状態です。

*解説:高川格本因坊の本は、わかり易い解説で、初心者にはとても最適な選択です。
*解説:初心者二人で始めたというのは、非常にめずらしいことで、普通は父親に習ったとか囲碁を知っている知人に教わったという方が大半です。
*持碁:囲碁用語で「ジゴ」と読みます。引き分け、しろうと同士がやってもなかなかならないもので、普通はどちらかが大勝することが多い。


囲碁の魅力を教えてください。

やってもやっても終点がない。ある人の話によると、おぎゃ~と生まれて100歳で死ぬまでご飯も食べずに打っても同じ囲碁はないと言われてます。現在、コンピューター囲碁があるけれども、将棋やチェス、オセロはコンピューターに負けたけど、囲碁だけは、まだまだ、人間のほうが強いというほど奥深いものです。
話は違いますが「駄目」という言葉は囲碁から来ています。囲碁では、「駄目を詰める」と言います。また、囲碁は負けを認め、勝負を投げる「投了」も囲碁の言葉です。いくら打っても勝てないときは、投了(中押し負け)します。これも実力のうちです。

*解説:碁盤は19の階乗なので、バリエーションがかなり豊富です。チェスの棋士がヨーロッパでコンピューターに負けて、その方たちが囲碁に流れてきています。
*駄目:「ダメ」黒白どちらにも囲まれていなくて、どちらの地にもならない無駄な場所で、終了の合図をした後、お互いに打ち、勝敗を決めます。
*解説:中国流は「ダメ」も詰めます。空いている「ダメ」に石を置くことによって、それまで安全だった石が取られたり、死んでしまったりします。追い討ちをかける感じになります。勝負としては、中国も日本も一緒ですが、日本のやり方のほうが断然美しいやり方です。日本の美学です。


日本福祉囲碁協会に入会され、事務局長をされていたのは、何年位ですか?

入会したのは平成8年1月です。
平成10年5月に役員就任、役職は総務人事。平成13年NPO法人と認められたことにより平成14年5月より事務局長理事となりました。昨年5月に退任するまで13年間、事務局長理事、現在は特別会員として、活動しています。
新年打初め会(毎年1月)、定時総会(毎年5月)、東京大会(毎年10月)、随時、ふれあい囲碁大会や各種交流会、研修会(年に1日が2回、宿泊が2回)が主な活動です。
この他に、老人クラブ、公民館、幼稚園、小学校で囲碁を教えています。


日本福祉囲碁協会の活動で、幼稚園や小学生、障がい者の方に教えてらっしゃると聞きましたが具体的に教えてください。

幼稚園は、年長さん全員が同レベルで用意ドンと始めます。「アタリになったら取られるよ」「アタリになったら逃げなさい」と2つのことしか教えません。幼稚園生には、「お母さんが駄目っていう言葉を使うでしょ、これは囲碁の言葉なんだよ」という話をしたりしながら、馴染んでもらいます。レジャーシートに線を入れて13路盤(13×13)の碁盤を作り、紙皿で白いものとマジックで色を塗った黒いものを用意し、雪組や月組を左右に並ばせて用意ドンでやります。わいわい騒いで大変です。また、磁石が付いた9路盤というのがあり、9×9の碁盤で遊ばせます。
小学生は、基本的に出来る子が来ます。

*アタリ:碁は線が交差しているところに打つので、碁石に対して四方囲まれる一歩手前の状態を「アタリ」と言います。出口をふさがれ、囲まれると取られてしまいます。


目が見えない方用の碁盤があるのですか?

9路盤の目の見えない方用の碁盤があります。黒石は上がざらざらしていて、白石はつるつるしています。碁盤には、かちっと埋め込めるように穴があいています。これは、関西方式です。東京のものは、白の上部が盛り上がっていて、黒はつるつるです。正式の大きさの19路盤は、障子の桟のように区切られ、中心の十字部分がわかるように工夫されています。


*解説:この目の見えない方用の碁盤は大変めずらしいもので、なかなか触ったり、見ることがないものです。

囲碁が打てる方はどなたでも参加して活動できますか?

出来なくても大丈夫です。覚えようとしている人も大歓迎です。段級位など、入会資格は特にありません。礼儀正しく碁を打てる方なら、どなたでも入会できます。ただ、年会費がちょっとかかります。男性1万8千円、女性1万2千円です。まったくやったことがない方でも、月に2回、日曜日に会員が教えています。やる気がある方であれば大丈夫です。また、会員の方には、顧問の曲勵起九段の指導碁や研修会があり、会員の棋力アップを目指しています。
現在、所属のボランティア棋士は約220名、訪問している施設は、180箇所(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県)で、1年中毎日のように、だれかが、どこかの施設を訪問しています。
現在の活動範囲は、首都圏ですが、全国への普及を願っています。新潟と熊本に同じ活動をしている会があります。
障がい者や高齢者施設の方で、囲碁を楽しみたいというご希望があれば、ご連絡ください。ボランティア棋士が訪問日を打ち合わせて、平日、土、日、祝日を問わず、お伺いします。


今後の活動について教えてください。

今後も、会員として、障害者福祉会館や浦安市の舞浜?楽部・高洲や富士見にてボランティア棋士として参加します。5月3日には東京都障害者福祉会館では、参加者の対戦相手を決めたりする裏方をやっています。


最後に安部さんにとって八幡高校とは?

最終学歴は八幡高校卒です。仕事をしながら慶応大学の通信講座で4年間勉強をしたのですが、卒業するためには、東京の慶応大学にて、最後に一ヶ月、スクーリングという講義を受けなくてはならず、これに出席しようとして有給休暇をぜんぶ貯めて、出席させて欲しいと、東京本店にまで行って、人事部長に直談判したのですが、叶えられませんでした。というわけで、入学はしたけど、大学は卒業出来ませんでした。
八幡高校は、私にとって唯一誇れる母校です。


後輩たちに伝えたいことは?

「好きこそものの上手なれ」
何か自分で好きなことがあったら徹底的にやって欲しいと思います。


安部さんは、囲碁のほかにも、総務管理士会の副会長、お孫さんの入学を機に小学生の登校時交通整理を10年間、現在は、浦安市の防犯ボランティアや防災ボランティアなどをやってらっしゃいます。スケジュール帳は、ほとんど埋まっていますと、楽しそうにお話されてました。
お忙しい中、いろいろと資料を準備していただき、ありがとうございました。
囲碁ボランティアに興味がある方、ぜひご連絡ください。

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藤城会長より
日本の囲碁人口は一千万人と言われています。
皆さん、等しく強くなろうと努力を重ねていますが、日本福祉囲碁協会の皆さまの様に身体が不自由で、碁会所などに行って囲碁を打てない人たちの許へ出張し、囲碁を打つボランティア活動を始めて知りました。
頭が下がります。
安部 健先輩は80歳とはとても見えない、若々しく凛とした姿勢は関東誠鏡会の誇りであり宝であります。
これからもますますのご活躍を期待しています。
今後ともよろしくお願いします。




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