厚生労働省 職業安定局 就労支援室長 
内田敏之さん(高33期)

Profile内田敏之(うちだとしゆき)さん

1981年 八幡高校卒業(高33期)
1985年 広島大学経済学部卒業
    労働省(現「厚生労働省」)入省

大学卒業後、労働省(現「厚生労働省」)に入省し、青森労働局職業安定部長、厚生労働省職業安定局局長書記、職業能力開発局総務課基盤整備室長などを歴任。現在は職業安定局就労支援室長として就職困難者の雇用対策を担当。 高校時代の部活はバドミントン同好会で、八高バドミントン部創設期メンバー。 本城中学出身。

厚生労働省11月下旬、霞が関の厚生労働省を訪問し、就労支援の仕事に携わる内田さんの現在の仕事と同窓生に役立ちそうな「国の制度」について伺いました。「働く意欲のある人を支援する国の制度」は想像以上に充実しており、「使わなきゃ損!」なものでした。

仕事は「働く意志を持つ人たちをサポートすること」。

なぜ今の仕事を選んだのですか?

大学4年の時に就職か大学院か悩んだのですが、経済学部で学んだ中で雇用対策や労働経済に興味を持ったので公務員を志望しました。北九州市役所も受けて合格しましたが、東京への憧れもあって(笑)労働省の方を選びました。

現在の仕事について教えて下さい。

厚生労働省

働く意志を持つ人たちをサポートすること、つまり「就労支援」です。 一口に「働く意志を持つ人」と言ってもさまざまですが私が室長を務める就労支援室の役割は大きく3つで「生活保護受給者やホームレスの方々の自立支援」「刑務所から出所してきた方々の就労支援」「就職差別のない社会の実現」です。いずれも非常に重い課題ですがやりがいがあります。

たとえば、現在ハローワークの常設窓口を福祉事務所内に設置することを進めています。「生活保護の手続きで福祉事務所に来た人がその場で仕事を探せること」が可能になり、かなりの成果を上げてきています。生活保護の給付を減らすことにつながりますし、何より就職によって自立した生活が可能になり、自尊心の回復や社会参加にもつながります。これらは政策効果として大きいですね。今年度中に全国150か所の福祉事務所内に設置します。

国会期間中は夜通しの作業も。

厚生労働省での一日は?

平常時は9時30分~18時15分が基本ですが、定時に帰宅することはまれで、家族と夕食を食べたことはほとんどありませんね。特に、国会期間中は担当分野の質疑が発生すると、夕方くらいに質問する議員に内容を聞き取りに行くのですが、質問の全貌が判明するのが夜中になることもあります。その後、答弁案を作成し、政策調整委員(政策を統括しているキーパースン)に確認して局長の決裁を仰ぎ、決裁が下りたら印刷に回し、翌朝7時くらいに大臣に説明する流れです。法案などの場合は質疑が二日三日と続くこともあり、そうなるとほとんど眠れない日が続きます。

国会の舞台裏がそんな感じだったとは。会期も長いし、臨時国会もあるし、大変そうですね。

はい。でも、厚生労働省には福祉や雇用など「世の中を少しでも良くしたい」と本気で取り組んでいる人がとても多くいるので、みんな乗り切ってきていますよ。

ところで霞が関ならではの用語があるらしいですね。

ありますよ。例えば、国会期間中、18時15分以降に質疑内容が判明していない場合は「待機」(省内にいること)、すべて判明して作業がない場合は「解除」(帰宅してもよい)です。国会期間中、担当は毎日「解除」の指示が来るまで帰れません。また、国会議員会館のことを「会館」、自省庁のことをなぜか「会社」や「我が社」と言う人もいます。

国が提供する「働く意欲のある人を支援する制度」。

就労支援のプロの内田さん、八高同窓生に役立ちそうな「国の制度」を教えてください!

内田さん

まずは「キャリアアップ」「キャリアチェンジ」などを目指す同窓生に役立つ「教育訓練給付制度」についてです。この制度は以前からありますが、今年10月に拡充され、「一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の二本立てになりました。

一つめの「一般教育訓練給付」は、一定要件(「雇用保険の被保険者であった期間が3年以上」など)を満たす人が厚生労働大臣指定の教育訓練講座(語学学校、専門学校、大学、大学院等)を受講して修了すると受講料の20%相当、上限10万円が給付されます。

二つめの「専門実践教育訓練給付」は、一定要件(こちらは「雇用保険の被保険者であった期間が10年以上」など)を満たす人が厚生労働大臣指定の教育訓練講座(専門学校、大学院等)を受講して修了すると、受講費用の40%相当を1年間の上限32万円で最大3年間、つまり最大96万円が給付されます。また、条件によっては追加の給付金もあり、その場合は最大で受講料の60%相当が給付、さらに45歳未満の離職者の方には受講中の生活を支援する制度も創設されました。中長期的なキャリアアップを考えている方には大変心強い制度だと思います。

条件等、いずれも詳しくはホームページをご確認ださい。
(※筆者注 記事の最後に該当ページへのリンクを掲載しています。)

語学学校や大学院に行くのにも国から給付があるとは知りませんでした! 「仕事を探す人を支援する制度」はどのようなものがありますか?

なんといっても「ハローワーク」です。全国で544か所設置しており、1日およそ17万人の方々が利用されています。

「ハローワーク」では、働く希望を持つ若者、女性、高齢者、障害者をはじめとするすべての国民の皆さまの就職実現のための支援を行っています。専門窓口も充実しています。子育てをしながら就職を望んでいる人向けの「マザーズハローワーク(マザーズコーナー)」、正規雇用を目指すフリーター向けで概ね45歳未満が対象の「わかものハローワーク」、卒業予定の学生や卒業しても就職していない人向けの「新卒応援ハローワーク」などです。

これら支援が役立つ同窓生やそのご子息もいらっしゃるでしょう。ぜひ利用してください。
(※筆者注 この記事の最後に関連ページへのリンクを掲載しています。)

休日はバドミントンのコーチ、そして、実は?!

「国」という大きな仕事に取り組んでいる内田さんの休日の過ごし方は?

八高時代から続けているバドミントンですね。今は小中学校でコーチをしています。子供たちを指導しながら、その子が伸びていくためには何が不足していて何をしてあげればいいのか、一人一人考えています。チーム全員を一定レベルまで引き上げるよう意識していて、これは仕事のマネジメント力向上にも大いに役立っています。

最後に、ぜひ伺いたかったのですが「アイドルおたく」って本当なんですか?

いえ・・・あの・・・秋元康氏のプロデュース力や「神の一手」と言われる人事の発想が凄いなって思っているだけでして・・・あ・・・えっと・・・AKB48の次のセンターが誰になるかは気になるのですが・・・(笑)

お忙しい中、ご協力ありがとうございました!

【編集後記】

  • 今回伺った「一般教育訓練給付」について、どんな資格等が対象か、試しに厚労省ホームページの「教育訓練講座検索システム」で検索してみた。試したのは筆者が気になっていた「中小企業診断士」「ファイナンシャル・プランニング」「TOEFL(英語)」「ソムリエ」。すると、すべての資格がヒット!それぞれ複数の「厚生労働大臣が指定した対象校」が出てきた。
    (※記事の最後に該当ページへのリンクを掲載しています。以下同様。)
  • また「専門実践教育訓練給付」についてはホームページにリストが掲載されていた。22ページに及ぶリストを見ていくと医療系、福祉系、クリエイター系、法律系、会計系、経営系(MBA取得)などなど、こちらも広範囲にカバーされていた。これらの制度、資格取得等を考える時はぜひ利用を検討したい「使わなきゃ損!」な制度のようだ。
  • またハローワークも同じく「使わなきゃ損!」だと思った。噂によると求人登録数の多さは民間の求人会社の比ではないらしい。その上、キャリアカウンセリングのプロ(ハローワーク職員)に相談にのってもらえることもあるはず。もちろん無料で。
  • インタビューの中で高齢者の就労支援について詳しく聞くことができなかったが、ホームページに「高年齢者雇用対策の概要」が見つかった。時折見かける「シルバー人材センター」も内田さんのいる職業安定局の所管事業のようだ。
  • 今回の取材でいちばん印象的だったのは「世の中を少しでも良くしたいと本気で取り組んでいる職員が多い」ということ。取材を通し、内田さんからもそれを十ニ分に感じた。資格をとるのも仕事を探すのも分かりやすい民間サービスの利用から考える人が多いと思うが、不夜城として有名な霞が関のビル群の中で本気で「世の中を良くしたい」と日夜編み出されている「国の制度」にもしっかり目を向けていきたい。




掲載されたブログに関する皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。
こちらよりお寄せください。