雨が降り続いた前日と打って変わって晴天に恵まれた6月10日の日曜日、日比谷公園にある日比谷図書文化館4階の「スタジオプラス」で、八高生特別セミナー「頑張れ、八高卒業生!2時間でマスターする『思いが伝わる、心が動く!感動スピーチ/プレゼンの技術』」が開催されました。
この催しは、今年の総会幹事期である高34期が同期の佐々木繁範さんの著書「スピーチの教科書」の発刊を祝い、後押ししようと企画したものです。若手同窓生の自己啓発に格好の機会であるとして、関東誠鏡会も開催に加わり、両者の共催事業となりました。

開催に先立って関東誠鏡会の藤城会長から次のような挨拶がありました。
「会長就任以来、若い皆さんへ同窓会からお届けできるようなイベントをしたいと思ってきましたが、6年目にして実現することができました。今後はこのような催しをもっとやっていけるといいと思います。参加された皆さんには今日の講演を有意義に活かしていただけたら幸いです。また、今後とも関東誠鏡会の活動にご理解とご協力をお願いいたします。今日の会を準備し、開催してくれた高34期の皆さんと講師の佐々木さんに心からお礼を申し上げます。」

セミナーの講師を務めてくれる佐々木繁範さんは、八高から同志社大学に進み、日本興業銀行、ソニーに勤務したあと2009年に独立し現在は経営コンサルタントとして活躍しています。ソニー時代には盛田昭夫会長の直属スタッフとして企業外交を補佐し、ハーバード・ケネディ・スクールに留学して公共経営学修士号を取得、その後出井伸之社長のスピーチライターを長年務めた経験から今回の著書を執筆しました。
今回はその著書に記されたスピーチやプレゼンの極意を直接伝授してくれました。

高34期 佐々木繁範講師


会場には、高62期の大学生二名を含む38名が集い、配布資料とプロジェクターで映し出されるスライドを基に佐々木講師が話す内容に耳を傾けました。
佐々木さんが潤いのある落ち着いた声で話してくれた当日の講演には遠く及びませんが、講演内容の概略をここにご紹介します。

◆感動をつくる7つのプロセス
1)場と聴衆を知る
何のために設定された場か、主催者は何を求めているか?
聴衆は誰か、何を求めているか?

2)メッセージを明確にする
もっとも伝えたいことを明確化し、スピーチ全体を通じて一つのメッセージを伝える

3)全体構成とボディ
スピーチの構成要素のうち、まず中核となる「ボディ」の内容を考える
メッセージが伝わりやすい構造、順番を考える
「ポイント提示型」「問題解決型」「ストーリー型」を適宜使い分け、あるいは組み合わせて、メイン・メッセージが聴衆のこころに届くような構成や内容を考える

4)オープニング
導入部で聴衆の注意を引きつける
3つの目的 聴衆の心をつかむ、心を通わせる、ロードマップを示す 5つのポイント 個人的・意外性・目新しさ・挑戦・ユーモア

5)クロージング
記憶に残る終わりかたを考えるメッセージを聴衆の記憶に焼き付けるためのクロージングのパターン
要約 ボディで示したメッセージを箇条書き的にまとめる
引用 メッセージと合致した「言葉」を引用し、印象付ける
パフォーマンス メッセージを伝える「行動」で印象付ける

6)リハーサル
原稿作成後にリハーサルの時間を余裕をもって設定しておく
リハーサルでもう一度原稿の文章や言葉を練り上げる

7)デリバリー(本番での心構えと留意点)
スピーチの内容を聴衆の心に届ける作業が「デリバリー」
スピーチ原稿を持って壇上に上がっても構わない
デリバリーで大切なことは「聴衆と心を通わせること」
話者の心と言葉と動作(目線)が一致していることが必須

佐々木さんは、この7つのプロセスをスティーブ・ジョブズの伝説的スピーチや先日行われたAKB48の「総選挙」でのスピーチ、アメリカの大統領選挙の遊説のスピーチなどを題材にして具体的に説明してくれました。
また、自分自身の失敗談も含め、ソニーの盛田氏や出井氏の下での経験談を交えて、参加者が興味深く聞くことができるように工夫されていて、この講演自体が一つの教科書になっていたと思います。

講演の最後には、講演内容を基に参加者が考えたスピーチを披露してもらい、佐々木講師が寸評を行うコーナーもあり、さっそく「7つのプロセス」を活用した参加者のスピーチに佐々木講師もにこやかな笑みを浮かべながら講評をされていました。

予定した2時間半はあっという間にたってしまい、参加者の皆さんもそれぞれに手ごたえを感じたようで満足げな表情で会場を後にしていました。

私自身は、クロージングの説明の中での「『引用』は言葉の贈り物です」という佐々木さんのフレーズが印象深く、なるほどとこころに残りました。
また、スピーチで本当に大切なことは話者の聴衆を思う心であり、メッセージを伝えようとする一生懸命さであり、そのための言葉でなければ聴衆の心には響かない、という言葉に、自分の思いを込めて素直な気持ちでスピーチに臨めばよいのだ、という思いを強くしました。

この講演を機にスピーチの機会を敬遠するのではなく、自らの挑戦の場として前向きにとらえていけたらいいなと思います。

惜しくもこの講演に出席できなかった方も、最寄りの本屋さんで佐々木講師執筆の『スピーチの教科書』(ダイヤモンド社刊)を入手すれば、この日披露された極意は余すところなく載っています。とても面白くて読みやすい本ですので、一度手にしてみてください。

講演終了後に、高34期が手配してくれた居酒屋で講演の参加者も含めた20名ほどによる懇親会も行われました。初めて関東誠鏡会の行事に参加する同窓生もいましたが、酒食が進むほどに和気あいあいの会となりました。

そんな中で、高62期の大学生・江口晋之介さんのお母さんが、高34期の三橋実行委員長の中学校の同級生であることが判明して、一同びっくり!
新たな繋がりも飛び出して、参加者のそれぞれに何かを産み出した特別セミナーでした。講師の佐々木さん、高34期の皆さん、総会の開催準備に向けて忙しい中、今回のセミナーの開催を準備してくださり、本当にありがとうございました。



高29期 松本勝義(関東誠鏡会理事・広報委員長)

※ 関東誠鏡会は、今回の講演会を共同主催しました。