洞海湾チャータークルーズ 「北九州工業地帯夜景鑑賞萌えツアー」


約30年ぶりに再会した旧友たちと共に、初めて海から見た故郷の夜景は、懐かしさと新鮮さが混じり合い、不思議な輝きとなって心の奥底にまで染み込んだ。

去る11月11日、
私は、高32期の平良君(サミット福岡 代表)が企画してくれた、「第90回誠鏡会総会前夜祭 洞海湾チャータークルーズ北九州工業地帯夜景鑑賞萌えツアー」に参加した。

午後6時、戸畑の渡船場に集合。
若戸大橋がライトに照らされて夜空に浮かび上がり、美しく静かに出迎えてくれた。渡船場のロビーでは、既に20数名の八高同窓生が集まり、所々で静かに談笑していた。
関東に住む私にとって、同期以外は殆ど知らない方ばかりだが、皆が八高同窓生だと思うと自然と安らぎを覚える。
しばらくして、高校時代の親友たちと再会。年賀状やメールでの交流はあったが、実際に会うのは約30年ぶりである。

午後6時半乗船。
今日の前夜祭では、若松から八高に通う友人たちが毎日乗っていた、あの若戸渡船をチャーターしてくれるという。
船は新造されていたが、大きさや形は昔と変わらず、共に乗る者がみな家族になれる温かみを持った小型船である。
乗船を終えると静かに出航。
船の上では、若戸渡船事務所所長の梅本さんが、自ら観光ガイドを行ってくれた。というのも、梅本さんも八高卒業生(高20期)なのだそうだ。やはり北九州では、八高の人脈は絶大である。

戸畑の渡船場を離れると、
対岸に若松市街地の夜景が広がってきた。
近年では若松北部への企業進出が活発化し、若松市街もベッドタウンとして栄えているとのこと。市街地の後方には高塔山が見える。パコダは今でもそこに在るだろう。この山頂の公園にハイキングに行ったことを思い出し、旧友と思い出話に花が咲く。

若松市街地を過ぎると、その前方に一際眩しい施設が見えてくる。若松ボートのナイター照明群である。競艇、競輪、競馬、北九州には賭博が多い。炭鉱に由来する気質だろうか。

若松競艇場を過ぎたあたりで、船はUターンした。

すると右手に、あの光の国が広がっていた。
そう、洞海湾夜景クルーズの目玉、黒崎、三菱マテリアルと三菱化学のプラント群である。幼少の頃から私は、鹿児島本線の車窓から見える、この光の国が大好きであった。記憶の中では、街のネオンや山笠の光とも重なり、夜の北九州は光の国として焼き付いている。

黒崎を過ぎ、船は八幡の沿岸へと進んでいく。
工場や街の後ろに帆柱山が見えた。
山頂の手前まで一直線に続く光の帯は、懐かしのケーブルカーである。若松の高塔山、八幡の帆柱山、小倉の愛宕山、北九州の街は皆、山と海に守られている。

前田を過ぎたあたりで、船は大きく右に曲がって、八幡泊地という入り江に進入。その奥には、新日鉄八幡製鉄所の岸壁があり、巨大なクレーンが船から資材を積み下ろしていたが、その対岸には枝光のスペースワールドが広がり、昔と今のコントラストを織り成していた。

入り江の出口から戸畑にかけての沿岸には、遊歩道が続き、その向こうに若戸大橋が見える。著名な観光地と見紛う、とても美しい構図だが、この海の独特の臭いだけは、ここが北九州であることを忘れさせない。

クルーズの後には、
渡船上傍の海員会館にて懇親会。高11期から45期までの50名が同船し、故郷の夜景に萌えて心から楽しい時を過ごした、誠鏡会の前夜祭であった。


高32 梶木