渡邊新之さん(高47期)

Profile渡邊新之さん
| 1995年 | 八幡高校卒業(高47期) | 上京 原宿のカフェにアルバイト入社 |
| 1996年 | 新宿のバーにアルバイト入社しバーテンダー修行 |
| 2007年 | 赤坂れくら入社 |
| 2010年 | 系列会社の代表取締役に就任。れくらと並行し、都内で複数飲食店の店舗展開を行う。 |
| 2022年 | 独立 赤坂れくらを親会社から買い取り、オーナーとなる |
2025年5月某日、東京有数のグルメ激戦区・赤坂で和食店を営む渡邊新之さんを取材しました。20代前半でモルトウイスキーに魅せられ、本場のスコットランドへヒッチハイクで蒸留所巡りをしたという渡邊さん。彼の思い立ったらすぐ動く行動力は、現在もおいしい料理とそれに合うお酒を提供する店でも活かされています。とことんまで“おいしい”を追求し続ける食のプロに日本酒の魅力、ペアリングの楽しみ方、そして関東誠鏡会への意気込みについてお話を伺いました。槻田中学出身。
渡邊さんと日本酒
どんな人生を歩んで来られたのですか?日本酒との出会いは?
八高ではバスケに明け暮れ、引退後も夏休みにママチャリで四国一周するなど、充実した高校時代を過ごしました。一方、勉強に打ち込んだとは言えず、大学はスポーツ科学を学ぼうと関西と関東の国立大学を受験しましたがともに不合格に。地元の国立大を希望していた親とは険悪になり、もう大学はいいやと予備校の手続きもせずに5月頃までピザ店でアルバイトをし、バスケ部の先輩を頼りほぼ家出同然に上京しました。ラッキーなことにピザ店の社長のお姉さんが原宿でカフェを経営しており、すぐに働き口は見つかりました。そこは1年ほどで辞めましたが、バー、居酒屋とその後も飲食畑を歩むことになります。“まかないがある”という理由で入った飲食業でしたが、結果として一生の仕事になりました。20代前半にはスコッチウイスキーを追求するためにヒッチハイクでスコットランドの蒸留所巡りをしたこともあり、「お酒への探究心」は元々自分の中にあったのかもしれません。2007年に「おいしい和食と日本酒のマッチング」がコンセプトの「れくら」に入店しました。ここで料理と日本酒を深く知ることになるのですが、並行して経営多角化のために2010年に設立された別会社の代表取締役を任され、12年間で様々な店舗展開を行った後、2022年にれくらを買い取り、独立しました(現在も前会社の代表取締役は継続)。
おちついた雰囲気の看板と店内
和食と日本酒の魅力、ペアリングの魅力について教えてください。
和食って面白いんですよ。他のジャンルの料理に比べ“旬”の食材を扱う機会が多く、日本料理独特の「うま味」を活かす微妙な味付けなど、調理法も繊細で飽きることがありません。れくらではお客様にもその時期に一番おいしいものを召し上がっていただきたいというところから、メニューは季節ごとのおまかせコースのみ(数種有り)のご提供になります。味は「喰い味=輪郭」を意識して、塩や醤油に頼らず、出汁を利かせて誰が食べてもパキッとわかりやすく美味しいものを目指しています。
日本酒は、酒米の種類や産地、水、製法、温度によっても味わいが変わるため、和食に限らず、様々なジャンルの料理に合わせることができる懐の深さがあります。香りも魅力で、れくらでは香りを最大限楽しんでいただけるよう、ワイングラスでご提供しています。ワイングラスは日本酒が本来持っている複雑な香りを他の器よりふんわりと引きだしてくれます。以前は、 “もっきり”(枡+コップに日本酒を注ぐ方法)で出していましたが、それでは香りが楽しめないと気づき、20年ほど前にこのスタイルになりました。
「料理と日本酒が寄り添い合ってお互いの良さを引きだす」のがペアリング※です。料理と日本酒、どちらが主役でもない。だから、日本酒の品揃えは、食中酒を意識し、大吟醸より純米吟醸や純米酒が中心となっています。和食も日本酒も懐が広いので、ペアリングはいかようにでもでき、常に発見があります。探究のしがいがあり、新たなペアリングを考えるのは楽しいですよ。 ※ペアリング、日本酒の基礎知識については【コラム】を御参照ください。
とはいえ、飲食店の経営は大変ですよね?どんなご苦労がありますか?苦労を乗り越えるためのモチベーションは何ですか?
飲食店経営の醍醐味は、やはりお客様に支持されることです。常連様はもちろんですが、新規でいらしたお客様がリピーターになっていただけると輪が広がっていくようで嬉しく思います。最初は仕事で訪れたお客様がご家族を連れていらっしゃることも少なくなく、中には小さかったお子さんが大きくなられてお客様としてご来店いただき、感動することもあります。とはいえ、飲食店ならではの先の読めない苦労はあります。赤坂という立地から接待のご利用も多いので、社会情勢の影響をダイレクトに受けて何度もピンチはありました。でも、その都度救いになるのはやはりお客様で、「頑張ってね」と嬉しい言葉に励まされることもしばしば。いつでも来ていただけるよう頑張って店を続けてこうという、モチベーションにつながっています。
日本酒のペアリングを最大限に楽しむためのコツ、これからの展望についておしえてください。
最終的には自分の好み、感覚を大切にしていただきたいと思います。既存のセオリーやルールに縛られすぎず、新たな開拓を柔軟な姿勢で楽しんでください。お店でもある程度のおすすめはしつつもお客様のお好みや感覚を反映し、究極のペアリングに出会っていただけるよう努力しております。私個人としては、食、酒の道は生涯続く冒険だと思っています。これからも新たな道を開拓していきたいですね。
素敵なお話をありがとうございました。
最後に久しぶりに集った同窓生たちの印象、当番期である今回の総会への意気込みついてをお聞かせください。
久しぶりに会った同級生たちの印象は、「八高生は頑張り屋さんだなあ」。総会は一大イベントとはいえ、ボランティアなのにみんな真面目に頑張って取り組んでいる。「八高生らしさに」うれしくなっています。
私の役目は司会と食のおもてなしです。1 Day Barでは、プロの目で選んだおいしい日本酒とウイスキーを取り揃えていますので、お酒好きの方は必見です。あと、飲食店運営で鍛えた声で、司会を務めます。同窓生の皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。
【コラム】
「日本酒」のちょい知識1 日本酒のペアリング
ペアリングとはお酒と料理のおいしさが最大限引き立つようなマッチングのことですが、実はペアリングにも様々な種類があります。代表的な例を紹介します。
①ウォッシュ/リフレッシュする濃厚な味の食事の後に口を中を洗い流すことで、次の一口を美味しくしてくれます。例えば、脂の乗った焼き魚×辛口※の日本酒などがこれにあたります。
②味の方向性を合わせる
濃い味×濃醇、薄味×淡麗、強い香り×強い香り、等の組み合わせでペアリングの基本です。味の濃淡を合わせるとより馴染み、例えば白身魚×純米大吟醸などが好例です。
③料理の味を引きだす
日本酒に含まれるアミノ酸には肉や魚の臭みを取り除く効果があり、料理本来のおいしさを引きだしてくれます。塩辛×純米酒、チーズ×純米酒などがこれにあたります。
④第三の味を生み出す
ワインで良く使われる「マリアージュ」がこれにあたります。お酒と料理を合わせることで料理、お酒、それぞれ単体だけでは味わえなかった味が生まれる組み合わせです。
「食べ方で味の変化を楽しむ」という考え方もあります。ひとつは料理を食べてからお酒を飲む形。①のウォッシュが代表的です。最近では料理とお酒を同時に口の中で混ぜ合わせることで味わいを変える「口中調味(こうちゅうちょうみ)」も注目されています。
【コラム】
「日本酒」のちょい知識2 日本酒の辛口・甘口
日本酒を注文するとき、たいていのお客さんが「辛口」と注文するそうですが、辛口とは何でしょう?辛口とは「甘くないお酒」で、英語では辛口の日本酒をDry、甘口の日本酒をSweetと表現するのだそうです。では、基準となるポイントは何でしょうか?最初のポイントは「日本酒度」です。これは糖度のことで、お酒の中の糖分が少なければ日本酒度は +(プラス)、糖分が多ければ日本酒度は −(マイナス)となります。しかし、日本酒度が高ければ必ず「辛口」かというと、そうとは言い切れません。次のポイント「酸度」が関わってきます。酸と甘さが結びつくと甘酸っぱくなり飲みやすくなり、糖分が多くても酸度とのバランスで辛口になることもあります。もうひとつ重要なポイントになるのが、「香り」です。香りが甘ければ甘く感じるため、糖度が少なくても「甘口」と感じる人もいます。その他に、のどごしなども関係するため、人によって「辛口」といっても味の幅が違うのです。
【関連リンク】
【編集後記】
渡邊さんは熱く、サービス精神旺盛な方。1時間程度の取材時間の中で、たくさんのお話をしてくださいました。ここでは本文に書ききれなかった食にまつわる「目からウロコ」の面白情報をいくつかご紹介します。
- ◎本ししゃもは雌より雄が断然おいしい! スーパーでは子持ちししゃも(カラフトシシャモ)ではなく、本ししゃもの雄を見つけたらこちらを買うべし。
- 新鮮なサンマの肝は苦くない 棒受け網漁で獲れたサンマは肝に鱗がたくさんだからおいしくない。刺し網漁で捕ったサンマの肝は鱗も入ってなく綺麗。また裏ごしした肝で作ったきも醤油を使って焼くと味が全然違う。
- ホタルイカは天ぷらで ホタルイカは肝が美味。お酒に合わせるなら断然天ぷらがオススメ。
- そら豆はさやごと丸焼きに そら豆は湯がくとうまみがお湯に流れ出てしまうので、さやのまま丸焼きが手軽でおいしい。さやの中で蒸されたそら豆の本来のうまみを味わえる。
- 枝豆は冷まして味をなじませる 枝豆は湯がいてすぐより少しおいて冷まして、常温くらいが豆本来の味がわかる。塩は多めに振るのがポイント。


