
住んでいるから知っている、ホントにいい場所、いいお店。
人気観光地の横浜市桜木町。桜木町駅からほぼ南北にJR根岸線が走っていますが、その根岸線を挟んで東口の浜側と反対の西口方面では全く違う桜木町の顔があります。東口方面には、観光地としてよく知られた横浜赤レンガ倉庫、パシフィコ横浜などおしゃれな浜のスポットが並びます。
そして今回は、桜木町の西口に広がる浜でない方面の「野毛」にスポットを当ててその魅力を同窓生に紹介していただきました。

【案内人】吹春里志さん
私がこの「野毛」に住み始めて約4年になります。それまでは福岡市に住んでいました。野毛という街は神奈川県随一の飲み屋街で週末の午後ともなればJR桜木町駅、京急日ノ出町駅から飲む気マンマンの人達が押し寄せて来ます。私がこの街に住もうと思ったのは、野毛には福岡に似た雰囲気のお店とそこで見知らぬ個人が繋がる福岡のような温かさがあると感じたからです。野毛には小規模な個人店が多く都会のチェーン店にはない温かい人情が残っている気がします。
本日は呑兵衛の聖地「野毛」を飲み屋以外の場所も含めて紹介致しますので是非今度いらして下さい。
おすすめ:その1
横浜の街を一望する丘の上―そこは、静寂と歴史が息づく野毛山公園、野毛山動物園、伊勢山皇大神社
桜木町駅は1872年(明治5年)、日本で初めて鉄道が開通した際に“初代・横浜駅”として開業した、まさに鉄道の原点とも言える場所。駅の西口を抜けると、どこか懐かしさを感じさせる商店街が続き、その先に緩やかに上る野毛坂通りが現れます。この坂を登りきった先に広がるのが、野毛山公園です。

園内にはおよそ380本の桜が植えられ、春には桃色の雲が漂うような光景が広がります。ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜と縁を持ち、かの地から贈られた桜やハナミズキが静かにその歴史を語ってくれます。訪れた日は開花予想日。桜はまだ硬いつぼみのままでしたが、可憐なハナミズキが春の訪れを告げていました。展望台からは横浜の港と街並みが一望でき、眼下に広がる風景に心がすっと澄みわたるようでした。満開の桜の日に、再びこの場所を訪れるのを夢見ています。

公園の一角にある野毛山動物園は、入場無料という気軽さも手伝い、ふと思い立った時に訪れるには絶好の場所です。キリンやシマウマ、フラミンゴといったおなじみの動物たちに加え、カメやヘビなど爬虫類の展示も充実。中でもレッサーパンダは、来園者のすぐ近くを軽やかに歩き回り、その愛らしい姿でひときわ注目を集めていました。ようやくカメラのフレームに収めた一枚には、彼のご機嫌な表情がしっかりと刻まれていました。北九州の到津動物園の話題で盛り上がり、動物園が育む記憶と人のつながりについて語り合いました。

伊勢山皇大神社は横浜総鎮守として知られる格式高い神社で、地元の人々から深く信仰されています。丘の上に鎮座するその姿は堂々としており、境内に足を踏み入れると、喧騒を離れた静けさが広がります。社殿と緑豊かな木々が融合し、心が自然と整うような清らかな空気が流れています。参道の坂道を登り切った鳥居のわきには、船の航行の安全のため明治15年に建てられた燈台の碑文があります。今はビルに囲まれていますが、海が見渡せた当時の光景が偲ばれます。
結婚式場としても人気があり、この日も白無垢姿の花嫁を見かけることができました。記念写真を撮る新郎・新婦は、地元で愛されている神社で厳かに儀式をあげられる幸せから満面の笑みで包まれていました。
おすすめ:その2
テレビでもおなじみ、街中華の名店「三幸苑」へ

横浜といえばやはり中華。今回は、吹春さんおすすめの街中華「三幸苑」へ足を運びました。この店は「まいう~」でおなじみのタレント・石塚英彦さんも絶賛する名店と聞いていたのです。
訪れたのは午後1時ごろ。すでに店内は満席で、外には行列ができていました。待っている間、店頭の大きな看板を見上げながら“作戦会議”。看板には「たんめん」「ちゃーめん」が看板メニューとありますが、迷った末に、ちゃーめん、チャーハン、餃子、バンバンジー、そしてビールを注文。中でも印象に残ったのが「ちゃーめん」。太麺の中華麺に、ニラ、豚肉、もやしがたっぷり絡んだ炒めそばで、もちもちとした食感に、パンチの効いたニンニクの香りが食欲をそそります。しっかりと味付けされた「チャーハン」には角切りの肉がゴロゴロ入り、シンプルながら満足度の高い一品。気がつけば、ビールをおかわりしていました。
満腹と満足を噛みしめながら、次回こそは看板メニューの「たんめん」を味わわなければと、心に誓ったのでした。
おすすめ:その3
ディープな魅力が詰まった、野毛の飲み屋街

野毛には、個性あふれる小さな酒場が軒を連ねています。戦後、横浜が米軍に占領される中、野毛だけはその影響を免れ、闇市として栄えた歴史を持ちます。その名残か、どこか懐かしく、濃密な空気感が漂うこの街には、串焼き、ホルモン、もつ煮といった昔ながらの大衆居酒屋が並びます。昼から暖簾を掲げる店も多く、明るいうちから“はしご酒”を楽しめるのも野毛ならではの醍醐味です。
おすすめ:その4
吹春さんイチ押しのワインバー「SimonS」

そんな野毛の中でも、吹春さんが熱く推薦するのが「SimonS」。ワインを片手に、料理と会話を楽しめるこぢんまりとした名店です。
数年ぶりに訪れた吹春さんをマスターが覚えていたことをきっかけに、すっかり常連となったとのこと。店にはそんなマスターの人柄に惹かれた人々が集い、店内はアットホームで和やかな空気に包まれています。この日は、ヒラメのカルパッチョ、佐賀県産ホワイトアスパラのサラダ、自家製ロースハムをいただきました。どれも洗練された味わいでしたが、特にロースハムは圧巻の美味しさで、「ファーストクラスに乗っているみたい」と思わず声が漏れるほど。吹春さんいわく、「マスターがワインをすすめてきたときは、だいたい自分も飲みたいとき。一緒に飲んであげてください」とのこと。そんなユーモアと人情が、料理とともにこの店の“隠し味”なのかもしれません。
本格イタリアンと絶品ワイン、そして心地よい時間が流れるSimonS。野毛の夜に迷ったら、ぜひ立ち寄りたい一軒です。
おすすめ:その5
本場の風が吹く、野毛の小さなタイ料理店「ミャオガパオ」

ミャオガパオは、タイ人の旦那さんと日本人の奥さまのご夫婦で営む異国の香りがふわりと漂う、コの字型のカウンターだけの小さなタイ料理店です。おふたりの空気感がとても心地よく、話しているうちに自然と笑顔になります。厨房を仕切るシェフは、なんとタイでお坊さんの経験もあるというユニークな経歴の持ち主。タイでは見られない“雪”には特別な思いがあるようで、初めて見た雪の話をワクワク感いっぱいで話してくれました。ガパオ、カオマンガイ、トムヤムクンなど、おなじみのタイ料理はどれも本場の味わいです。辛さはリクエストに応じて調理してくれ、卓上にはお手製のタイ調味料が並んでいるので自分好みへのカスタマイズも楽しめます。タイの3大メジャービールSINGHA、LEO、CHANGが勢ぞろいしていて、スパイスの香りが立ち上ると、自然とビールが進みます。タイウイスキーもあり、エスニックな雰囲気を満喫できます。
そんな異国情緒と野毛らしい人情が交差する、隠れた名店です。
おすすめ:その6
昭和の香りただよう「都橋のビール屋」

野毛のもう一つの顔!それが「都橋」エリアです。ここは、大岡川沿いに建つ二階建ての長屋風建築に小さなバーやスナックがびっしりと並んだ、まさに昭和レトロな空間。ネオンが灯る夜には、まるで映画のワンシーンのような幻想的な景色が広がります。ただしご注意を。2階のネオンと1階の店舗が一致していないこともしばしば(ほぼ一致していない?)です。
そんな長屋の一角にあるのが、吹春さんおすすめの「都橋のビール屋」。正式名称は「ウナ カサ デ グビグビ エルヌビチノ(Una casa de G.b. G.b. El Nubichnom)」というユニークな名前のクラフトビール専門店です。ここでは、日本各地のクラフトビールを取り揃えており、ビールごとに最適なグラスと注ぎ方を変えるというこだわりぶり。マスターは、日本でクラフトビールがブームになる前からこの世界に携わってきたベテランです。香りや泡立ちまで完璧に引き出すその技術は、まさに職人芸。この日、メニューには5種類(最大6種類)のビールが並び、「本日開栓」「残りわずか」など、ついついジョッキを重ねてしまいたくなる心をくすぐるコメントが添えられていました。
取材の締めくくりに訪れた店でしたが、「次はここから始めたい」と、心から思わせてくれる一軒でした。
【編集後記】
歴史があり、静謐なひとときがあり、懐かしく濃密な空気感がただよう。喧騒と静寂が共存する、それが、横浜桜木町・野毛という街の魅力なのかもしれません。
ご紹介したスポット一覧
1野毛山公園・野毛山動物園
横浜市西区老松町63-10
動物園開園時間:9:30~16:30(入園は16:00まで)
動物園休園日:毎週月曜日(祝日にあたる場合は翌日)、12月29日~1月1日
※5,10月は無休
入園料:無料
https://www.kanagawa-kankou.or.jp/spot/323
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/welcome.php
2伊勢山皇大神宮
横浜市西区宮崎町64番地
TEL:045-241-1122
https://www.iseyama.jp/
3三幸苑 野毛店
横浜市中区野毛町3-135 中屋ビル1F
TEL:045-231-4450
営業時間 :【火・水・木・金】10:30~15:00 17:00~22:00 【土・日】10:30~22:00
定休日:月曜日
https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140102/14066531/?msockid=240f96e309f567190a40846f08076620
4SimonS
横浜市中区宮川町2-35 プリムール101
営業時間 :【火・水・木・金】17:00~00:30【土・日】15:00~00:00
定休日:月曜日
TEL:045-315-5529
https://www.facebook.com/SimonSnoge/?fref=ts
5ミャオガパオ
横浜市中区吉田町5-4 第6吉田ビル1F
営業時間 :【月・水・木】16:30~23:30 【金・土・日】11:30~14:00、16:30~23:30
定休日:火曜、第一第三水曜日(たまに変更有あり)
https://www.instagram.com/meaw_gapao
6都橋のビール屋
横浜市中区宮川町1-1 都橋商店街1F-117
営業時間 :【月曜】17:30~22:30【金曜】17:30~23:30【土曜】15:00~23:30【日曜】15:00~20:00 ※夏期は21:00まで
定休日:火、水、木
TEL:045-231-3626
https://ameblo.jp/el-nubichinom/