シャッター街から新しい街へ、知らなかった変わりつつある「若松」をご紹介します

3年間渡船に揺られて八高まで通った筆者です。若松で生まれ育ち、青春時代のアイデンティティを形成してくれた街。それは若松です。かつて賑やかだった商店街も今ではシャッター街へと変貌し、耳にするのは寂しくなった街の話ばかりです。しかしながら、そんな若松も素敵な北海岸や若い人たちの新しい街づくりなど、新しい顔に変わってきていると聞きました。今回の「知っとぉ?」は、おいべっさんととらやの回転まんじゅうだけではない、変わりゆく新しい『若松』をご紹介したいと思います。

北九州のプロヴァンス・・・だと・・・? そんな素敵な若松北海岸

『若松北海岸は、北九州のプロヴァンス(南フランス)』? 今では若松北海岸はそんな風に呼ばれているようです。アルミナ原料粕の真っ赤なボーキサイトで埋め立てられ、いつも遊んでいた砂浜がどんどんと赤い海に変わっていった、筆者が子供の頃の記憶からは想像もできません。砂浜、岬の灯台、釣り桟橋、海浜公園、フィッシャーマンズワーフ、そしてひまわり、コスモス、風車と並ぶと、確かに「北九州一美しい海岸」と呼ばれ、白砂青松の景勝地といわれるのもわかります。ドライブ、サイクリング、自然観察、エコタウンとアクティビティも変わってきているようです。


廃棄物処分場跡地につくられた日本最大級のビオトープがあり、風車が並ぶ風景からは、かつてここが赤い海だった事を知るすべもありません。ビオトープとは、生き物がありのままに生息活動する場所。自然とふれあいながら生物多様性を学ぶ環境学習拠点だそうです。かつての廃棄場がエコにつながっているのですね。



海亀の産卵も確認された脇田海水浴場は、福岡県でも有数の水質良好な海水浴場だそうです。遠見ヶ鼻は、江戸時代に密貿易船を監視する番所があった場所で、白い灯台が目印です。波風で浸食された奇岩千畳敷や、西の海に沈む美しい夕日が見られます。岩屋の海岸線は本当にきれいになりました。




筆者が子供の頃遊んだ脇田には「フィッシャーマンズワーフ 汐入の里」ができていて、とれたての魚介類や地元若松産の野菜がお土産に買えるし、一帯のひびき海の公園(マリンパーク)には海釣り桟橋や海水浴場が整備され、マリンレジャー施設になっていてビックリ。若松ってすごくいい所やん。

へぇ~、九州ジャズ発祥の地?ジャズの街「若松」??

明治中期から昭和初期にかけて石炭の積み出しで栄えた若松ですが、当時若松から中国へ輸出された石炭と引き換えに、ジャズ(JAZZ)は19世紀「東洋のパリ」と呼ばれた上海より若松に上陸したそうです。若者からハイカラ音楽として愛され、バンドも結成されました。彼らの演奏は博多や筑豊でも好評で、当時の若松のジャズ文化は輝いていたそうです。

そんな若松のジャズ文化を復活させようと、「若松で音楽を聴く会」代表の和田さんを中心にJAZZを通じての様々な街おこしが行われています。今年22回目を迎えるイベント「若松鉄人JAZZ」は、全国からのミュージシャン、ファンを迎え、老若男女が楽しめる夏の風物詩となり、盛大なイベントとなっています。また、地元の若松中学にはJAZZのビッグバンドが誕生したり、スイスの子どもバンドとの交流をしたりと『JAZZの街 若松』は様々な活動へとつながっています。「若松で音楽を聴く会」は、創意工夫を生かした地域づくり活動により、地域活性化に功績があった団体を表彰する平成20年度「地域づくり表彰」で国土交通大臣賞を受賞しました。


『JAZZの街 若松』の聖地が、本町にある洋食ジャズ喫茶「エル・エヴァンス」です。
店内は落ち着いた雰囲気で、JAZZを聞きながらゆったりとした時間をすごせると思います。気さくなお店はハンバーグやオムライス、コロッケといった洋食の数々。県内外からジャズ好きの方のみでなく地元のおばさんたちも(笑)。第3・第4土曜20時から、ノーチャージのジャズライブを行っているそうです。ジャズの街 若松を楽しんでみてはいかがでしょう。


噂のクロワッサンは旧石炭会館の「三日月屋」


北九州市でクロワッサンといえば・・・若松の「三日月屋」という方は多いのではないでしょうか?
全国版のTV番組でも紹介されて有名店になりました。博多駅や福岡空港でも買えますが、最近小倉駅にもお店ができました。一般的には「三日月のクロワッサン」と呼ばれています。天然酵母を使ったクロワッサンはとにかく美味しくて、大きくて食べ応えがあって種類も豊富で、他のクロワッサンとは全然違います。お土産に買っていくとまずは喜んでもらえます。



三日月屋の若松本店は、若戸渡船場の近く、歴史的な建物が並ぶ若松バンドの一角、旧石炭会館の1階にあります。この建物は、元々は石炭商同業組合事務所として明治38年に建てられた歴史的建造物。若松では最も古い洋館で、北九州市の景観重要建造物に指定されています。木造2階建ての歴史を感じるシンメトリーな外観の寄棟瓦葺き。当時は、石炭関係者の社交場やクラブ、迎賓館として使われた、石炭の積み出し港として栄えた若松の歴史を表す建物です。

ちなみに、三日月屋さんは、ソフトクリームも美味しいです!是非ご賞味あれ!


あのベラミ山荘も復活??リノベーションまちづくり「ワカマツグラシ」

かつて石炭積出港として繁栄した若松ですが。若戸大橋のたもとのかつての中心市街地は、時代とともにその役割を失い、高齢化が進み、町全体の約半数が築70年以上の空き家になってしまいました。50軒のうちの半数が空き家、中には倒壊する家屋もあるという街並みですが、若戸大橋のたもとの中川町を拠点に2014年より地元のまちづくりチーム「ワカマツグラシ」によるエリアマネジメントによって、古い空き家をカフェやショップ、シェアハウスに改修し、町のにぎわい復活に奮闘する動きが始まっています。老朽化した空き家の復活、若者たちのDIYによるリノベーションで新たな街づくりが行われています。


空き家を改装してオープンした「カフェダンジョン」に始まったリノベーションは、周囲に少しずつ輪が広がり、新たな素敵な店舗がオープンして、仕事が生まれ始めているようです。インテリア好きの若い女性の憧れ、東京・代官山にあるインテリアマテリアルストア「Decor Tokyo」のECサイト「MATERIAL」の実店舗が、なんと若松に「MATERIAL中川町」としてオープンしました。



「カフェダンジョン」の隣にはダイニングバー「NAKAGAWA Spoil」がオープン、本町には若松を訪れたサイクリストやランナーのための休憩交流施設、「本町terminal」がオープン。九州工業大の女子大学院生3人と手がけたシェアハウス「recoya(りこや)」は、学生がここに移住し九工大まで通う事になったそうです。また、昭和の40年代からの高度成長期、若松で隆盛を誇ったキャバレー「ベラミ」のホステスさんたちの宿舎だった高塔山の知る人ぞ知る廃墟「ベラミ山荘」も、当時の趣を残しながらも今の世代のクリエイターの人たちのショップや展覧会など情報発信の場所として貸し出され、入居者と地域の人々との歴史をつなぐ建物として再生されています。不思議な魅力に溢れた空間になっているようです。



古い空き家がリノベーションされて、素敵なショップや民泊施設が次々とオープンして、クリエイターなど全国からの移住者や旅行者を迎え、人が集まる場所をつくり、だんだんとシャッターが開いていく街へ。そんな動きに連動して商店街にイルミネーションが復活したそうです。「訪れて、住んで、働いて、消費する街へ」。そんな若松の街づくり、新しい取り組みに注目です。

帰省の際には、是非若松に遊びにお出かけください。そして、老後は自然に恵まれ、物価も安い素敵な若松暮らし?を考えてみてはいかがでしょう。




【編集後記】
取材を通じて、シャッター街の寂れたお話だけはでない、新しい「若松」は、まだまだ廃れないぞ!というバイタリティー、若い感性のみなさんのエネルギーを感じました。物流やインターネット、交通が発達した現代では、テレビ会話もできますし、ビジネス上、東京にいる必要性はなくなってきているのかもしれませんね。



※若松に詳しくない方のために、スポットを幾つか地図でご紹介します。
①エル・エバンス 北九州市若松区本町2-9-20
②三日月屋 北九州市若松区本町1-13-15
③カフェダンジョン 北九州市若松区中川町6-14
④MATERIAL中川町 北九州市若松区中川町7-6
⑤本町Terminal 北九州市若松区本町3-2-7
⑥ベラミ山荘 北九州市若松区山ノ堂町16-5-1







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