株式会社MODAMANIA 代表 
朴玉英さん(高39期)


Profile朴玉英(ぼくたまえ)さん

1987年八幡高校卒業(高39期)
1992年金沢美術工芸大学卒業
1995年イタリア留学。国立ファエンツァ陶芸専門学校、ボローニャ美術大学アッカデミアに在籍した後、ファッション業界で経験を積む。※イタリアには6年滞在
2002年MODAMANIA設立
2012年TOKYU BUNKAMURA、三越系列店にてオリジナルレザースマホケース販売開始

大学卒業後、イタリア留学で彫刻と美術史を学んだのち、ファッション業界に進出しデザイン、買い付け、販売のノウハウを身につける。帰国後、2002年にヨーロッパの高級プレタポルテを独自で輸入・販売するセレクトショップ(株)MODAMANIAを設立(当時は福岡)。2010年からITガジェット(スマホケースなど)の革小物の企画・製造・販売をスタート。TOKYU BUNKAMURAのショップでバッグとオリジナルスマホケースの取扱いを皮切りに、2012年より三越伊勢丹でも販売開始。並行して国内外のファッションアイテムの代理販売やインターネット販売を行っている。高見中学出身。


2017年3月某日、株式会社MODAMANIA事務所にて、同社代表・朴さんにファッションのこれからと自分らしいおしゃれの楽しみ方、さらに当番期として関東総会への意気込み等についてお話を伺いました。

朴さんとイタリア、ファッションとの出会い。

そもそも、なぜ金沢の美大に?イタリア留学のきっかけは?

もともと絵を描いたり、ものを作るのが好きでしたし、美術の先生(八高では松島先生)に可愛がっていただいた影響もあり美大を志望しました。でも両親は大反対。浪人という選択肢はありませんから、現役で公立の金沢美術工芸大学に合格したうえで、なんとか説得しました。工芸科に進み、陶磁、漆・木工、金工、染織などを一通り学んだうえで、陶磁を専攻。 イタリアへは、尊敬する大学の恩師が「イタリアはいいぞ」といつもおっしゃっていて、卒業したら「絶対に行こう」と決めていました。在学中からイタリア語を学び始め、少しずつ夢を膨らませていきました。


大卒後、一旦就職されていますが?

留学する気は満々なのですが、さすがに卒業後すぐには無理。一旦、愛知県瀬戸の焼き物会社に就職し、デザインと制作を担当していましたが、早くイタリアに行きたくて、1年で退職しました。とはいえ、お金を貯めなければいけないし、イタリア語の習得や留学の手続きなどいろいろ大変で、実現するまでそこから3年ほどかかりました。その間、語学留学や旅行などをする余裕もありませんから、イタリア語はまさに自力で習得。東京でアルバイトしながら語学学校に通うなど、猛勉強してマスターしました。だから、初めてのイタリアは、いきなりの正規留学でして・・・。今振り返っても、よくやったなあと思いますね。


イタリアでは何を学んだのですか?

イタリアでは最初、ラヴェンナ県にあるファエンナ市の国立陶芸専門学校で学んだ後、そのボローニャのアッカデミア美術学院で彫刻を専攻しました。そして、地元で知り合ったファッション業界の人のお手伝いをするうちに洋服の面白さに目覚め、ファッションビジネスの世界へ。買い付け、デザイン、販売のノウハウを身につけつつ、”いいものを見極める目”を養い、6年(大学在籍期間含む)で帰国しました。

イタリアの主な都市の位置関係


高級革製スマホケースのファーストムーバーへ

帰国後のお仕事について教えてください

帰国後は、最先端のヨーロッパの服飾雑貨を扱うお店を福岡でオープン。しばらくはお客様にも恵まれ商売は順調でした。しかし、ゆるゆると景気は落ち込み、買い付けに行くたびにハイブランドの顧客層(国)が変わるのを目の当たりにして「このままではマズイ」と。そんなとき、お客さんから「オリジナル商品作れば?」と言われ、方向転換しました(笑)。テレビ通販から始めましたが、価格競争はもちろん、使用済み商品返品OKなどのシステムに疲弊してしまい、またしても苦境に陥ってしまいました。ところが、このピンチから逆に次の一手を発見。起死回生のチャンスへと結びついたのです。


自社製品のポスター横でパチリ。


それが、世界初の手帳型スマホケースの誕生のきっかけに?

はい。それが、現在のメイン事業となる「高級レザースマホケース」の開発のきっかけになりました。当時、コストマッチングや生産の現実性を求めて韓国や中国、東南アジアへちょくちょく出向いていたのですが、韓国や中国、シンガポールではスマホが普及し、お爺ちゃんお婆ちゃんまでも普通に持っていることに気づいたんです。その頃(2010年頃)、日本ではまだみんなガラケーでしたが、「次はこれだ!」と。しかし、商品ができあがったものの(2012年)、スマホケースは家電量販店でビニール製が扱われているだけの認知度は低いもので、そこにいきなり本革の高級品を作ったのですから、簡単に受け入れてもらえるはずはありません。でも、商品には自信がありましたから飛び込みで資生堂や東急百貨店、三越百貨店に営業を開始。三越百貨店では、いきなりインフォメーションカウンターで「バイヤーさんを呼んでください」と受付嬢を戸惑わせましたが、商品を見せるとバイヤーさんは納得し取引がスタートしました。現在の主流である「手帳型スマートフォンケース」を販売したのは、うちが世界初なんですよ。


三越伊勢丹の皮革製品でも人気商品


ファッションのこれから。朴さんの展望について。

これからのファッションはどうなると思いますか?また、どうしたらファッションを楽しみ続けられると思いますか?

グローバル化、ファストファッションの定着などで、ファッションの価値観はすっかり変わってしまいました。ヨーロッパのハイブランドでも、もともとブランドの成り立ちから知っているようなお金持ちは「お金を出せば誰でも買える物」には、興味を示さなくなっているそうです。そんな中、「スローファッション=大量生産せず、環境に配慮しながら、質のいいファッションアイテムを作り長く愛用するムーヴメント」の流れが始まっています。次から次に流行を追いかけ、大量生産で「消費」していくのではなく、商品の出自(素材や制作背景)を理解し、自分に合った本当に必要なものを、長く愛用する。そこには人と人の繋がりも介在するわけです。本当に愛せるものを見つけていくことが、これからのファッションの楽しみ方だと思います。


そして、朴さん自身はファッションとどう関わっていきたいですか?

私自身、もの作りも好きですが「こんないいものがあるよ」と皆に伝えていくのも大好きです。私にとってのライフワークであり、常に”いいもの”をキャッチできるよう、広くアンテナを張っています。そんな私の今のイチオシが、イタリアで見つけた、ビスポーク(フルオーダー)の靴とブローチつきのアートなスカーフ、そしてバチカン御用達のシルバー(食器)メーカーのハンドバッグです。
特にビスポークの靴は本当におすすめ。アルフィオ・ブルスキというイタリアの靴職人のものですが、履き心地が本当によく自分の身体の一部のようで、1度履くと他の靴は履きたくなくなるほど。そして、今は3Dプリンターでの採寸が可能なので、わざわざイタリアに行かなくても遠隔操作で正確なサイズを測ることができます。最新テクノロジーを使って、だれもが昔ながらの王道を味わえる。ぜひ、その素晴らしさ皆さんにも感じてもらいたいですね。


アルフィオ・ブルスキのビスポークシューズ。素材づくりからすべてひとりで製作しており、なんと縫製用の糸まで手作りだそう。



ルチャナ・ラベッリのスカーフは基本すべて自然のものでブローチ部分は口に入れても大丈夫な樹脂。模様になっている木も自然の中で見つけたものだそうです。


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ノーアポで、デパートのインフォメーションカウンターに飛び込み・・・。まさに怖いもの知らずの行動力!すごいと感心する一方で、アイデアや技術を、温めるだけで発信しなければ形にはならないと思い知らされました。

常に笑顔でエネルギー溢れる朴さん、いいお話を本当にありがとうございました。


ところで、8月26日(土)の関東誠鏡会総会が直前に迫ってきました。最後に当番期として、今年の総会のPRをお願いします。

誠鏡会は人生の根っ子の部分で共通項を持った世代の違う大人の集まり。総会ではそうした人たちと一気に出逢えます。この日だけは日頃の人間関係を忘れて、青春時代に戻って、楽しく仲良くなれるって、素晴らしいと思いませんか?先輩方、後輩たちの姿を眺めながら来し方行く末に思いを馳せつつ、しみじみ飲むもよし、この出会いを今後の社会活動のきっかけにするもよし、愉しみ方は色々です!!ぜひお越しください。


【編集後記】

  • 朴さんはとにかくパワフルで豪快。どんなことでも笑い飛ばすエネルギーに取材者2人は圧倒されつつ、笑いっぱなしの3時間強でした。
  • 朴さんの豪快エピソード。靴職人のアルフィオ・ブルスキさんをフェイスブックで見つけすぐにイタリアへ訪問。考えるより行動する朴さんらしいエピソードです。




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