ここ数年は地方創生ブーム。よく「地方創生にはよそ者の目線が欠かせない」と耳にするようになった。北九州市はよそ者の目にどう映るんだろう?これまで一度も北九州を訪れたことがない「よそ者」さん(関東生まれ・関東育ち・関東在住)を10月の三連休に地元に誘って一緒に市内観光をしてみた。その滞在中に「よそ者さんの目に映った北九州」をメモ形式でレポート。まずは出発前の「北九州のイメージ」のヒアリングから。

北九州市は「身体に悪そう、暗そう」。


北九州のイメージ について

よそ者さん(以降【よ】)
● 「北九州」で浮かぶのは、 教科書にあった北九州工業地帯とニュースで何度か見た抗争事件
● イメージは、空気が汚なくて身体に悪そう、そして暗そう

北九州の「総合観光パンフレット」を見て

【よ】 ●

冒頭から読めない人が多そう。新幹線の駅がある「コクラ」、八幡製鐵所で有名な「ヤハタ」、そして「ワカマツ」は読める。これ(門司)は「モンジ」か「モンシ」?これ(戸畑)は「トバタケ」?そして中のページのこれ(響灘)は「キョウナダ」?「ヒビキナダ」?

観光スポットが「各区にたくさんある」のは分かったが、「北九州市のメインの見どころ」が分からない


観光パンフレットの「グルメ」のページを見て

【よ】 ●

北九州グルメは普通のものが多い。肉うどん、焼きうどん、ぎょうざ、チャンポン、ロールケーキ・・・
( ※「小倉の肉うどん」「小倉発祥焼きうどん」「八幡ぎょうざ」「戸畑チャンポン」「シュガーロードのロールケーキ」のこと)

聞いたことがあるのは関門のふぐ(だけ)


今回、よそ者さんを案内するにあたり、観光テーマを「工業ロマン、北九州」にすることにした。そして、北九州の数多くのスポットや食から「工業ロマン」に纏わるアイテムを抽出。

そうしたのには理由がある。北九州にたくさんある「歴史的建築物」「自然」「美味しいもの」などは全国各地それぞれにも数多くあり、これらだと遠方の人を北九州まで足を運ばせて満足させるには少々難易度が高い。でも、「工業ロマン」なら、「北九州工業地帯(北九州工業地域)」の全国的な知名度を活かした「北九州ならではの観光」になりそうで「北九州まで来て良かった」と思ってもらえそうだから。

いざ、よそ者さんと北九州へ!

北九州市は「産業用建造物と自然が織りなす光景が魅力的」。


「工場夜景クルーズ」へ

【夜景鑑賞定期クルーズ・工場夜景観賞コース(関門汽船)】 小倉港を出発し、ガイドによる産業の歴史などの説明を聞きながら洞海湾を巡る90分。ライトアップされた「新日鐵住金」「九州電力」「三菱化学」「日本コークス」ほかの”工場萌え”な夜景と「若戸大橋」「高塔山」「皿倉山」の夜景も鑑賞。

【よ】 ●

小学校で習った北九州工業地帯を目の前で観れて嬉しい

目の前にあるのが近代日本の礎を築いてくれた工業地帯だと思うと「本当にありがとう」という気持ちになった

北九州は、山があり、海があり、工場があり、「産業用建造物と自然の組み合わせ」が風光明媚だと思った。「風光・・」は正しくは自然に対して使う言葉だけど「建造物と自然の組み合わせの景色」を褒める言葉が見つからない


翌日は「河内貯水池」へ

【河内貯水池】 八幡製鐵所の工業用貯水池で新日鐵住金の所有。第一次世界大戦勃発後に急激に鉄鋼需要が増えて終戦の翌年の1919年に着工。8年後の1927年(昭和2年)に完成。今も使っているので今年で88年め。

【よ】 ●

ここも歴史の重みを感じるし、産業用建造物と周囲の自然が織りなす光景がとてもいい!

街から車でたった10分強でこんな自然があるとはビックリ

なのに、三連休でも殆ど人がいないのにもビックリ、いい所なのに首都圏だと考えられない

家族やカップルがゆっくり過ごせるテーブルと椅子や広場があるといいのかも


「東田第一高炉跡」へ

【東田第一高炉跡】 敷地外からは一部しか見えないが、敷地内には1962年から1972年まで実際に使われていた「高炉設備の一式(高炉本体・環状管・熱風炉・弁類ほか)」が当時の写真などとともに展示されている。

【よ】 ●

実際に使われていたリアルな設備一式をこんなに間近に見ながら「鉄作り」を学べるのは迫力がある

国会議事堂やワールドトレードセンターも八幡製鐵所の鋼材を使ったとは知らなかった。近代日本の礎を築いた北九州、かっこいい


「世界遺産バスツアー」に参加

【祝、世界遺産登録!官営八幡製鐵所関連施設見学 公認バスツアー(JTB)】バスから降りたり写真を撮ったりできるのは「旧本事務所」に限られるが、このツアーに参加すれば通常は入れない八幡製鐵所構内に入ることができ、車窓から「修繕工場」を含む構内の様子を観ることができる。

【よ】 ●

仮に、この世界遺産だけを目的に北九州に来ていたら、観た後は「ふうん」かもしれない。世界遺産を観たことよりも普通は入れない八幡製鐵所に入れたことの方が嬉しいと思っただろう

でも今回は既に幾つかの八幡製鐵所関連スポットを周っていて、歴史や現在の製鐵所の知識を身につけていたから、ここでもその一部に触れられて良かった。しかも世界遺産

JTBのツアーに北九州市の職員の人達が登場し、自ら参加者にヘルメットを配ったり、ガイドをしてくれたり、写真を撮ってくれたのは予想外


メインの「工業ロマン」は昨日までにして、三日目は足を伸ばして門司港へ。

三日目は門司港

めかり神社で関門海峡を眺め、門司港レトロへ。

【よ】 ●

関門海峡、川かと思った(笑)。が、狭い分余計に、海、山、空、橋、船の景色に迫力がある

何度も言うが、やはり北九州は建造物と自然が織りなす光景が魅力的

門司港レトロは、土産店とかレストランが並ぶ中、本物の歴史建造物まで作り物のように見えてしまう。市民が週末に食事するには良さそうに思う


次は滞在中の「北九州グルメ」をまとめて。
こちらも観光スポットと同様に「工業ロマン、北九州」を中心に。

「北九州グルメは普通のものばかり」と思っていたけれど・・・。


角打ち(二軒訪問)

【角打ち】北九州では酒屋の店内のカウンターで量り売りの酒を買い、立ち飲みするスタイルをいう。酒屋は朝から開いているので、かつては夜勤明けの鉄工マン達が帰宅前に一杯ひっかけていた。

【よ】 ●

店のリアルな古さが最高だ

工業の発展の歴史に関わった「北九州ならでは」感も楽しい

飲みたい時にサッと寄ってサッと飲めるのもジューススタンドのように便利。「喉が渇いた時はソフトドリンクよりビール」という観光客に受ける

「時々、角打ちで喉を潤しながら」を北九州の観光スタイルにできそうな。横浜中華街の食べ歩きみたいに

酒屋ではない、いろいろな飲食店が「角打ち」と掲げているので、観光客には本当の角打ちや歴史が伝わらない。「角打ち」「角打ち風」などにして何らかの共通フォーマットが必要


おはぎ/ぼた餅(二軒訪問)

【おはぎ/ぼた餅】 24時間体制、3交代で働く鉄工マンや炭鉱マンを支えていた糖分。

【よ】 ●

北九州は、どこに行っても「おはぎ」が売っている。うどん屋、レストラン、惣菜店
(※関東では、和菓子屋やスーパーなど小売店だけで、しかもお彼岸だけ登場する季節物)

店によって味が微妙に違うのは博多ラーメンみたい

おはぎも北九州の工業発展の一助なので、観光パンフに各店の特長を載せた「おはぎマップ」があるといい。「角打ちマップ」も

「おはぎ」か「ぼた餅」か、名称を統一した方が北九州名物として広まりやすそう


戸畑ちゃんぽん(二軒訪問)

【戸畑ちゃんぽん】蒸し麺から茹でるのが特徴で、出来上がりが早くてボリュームもあり、鉄工マンたちに愛されていた。

【よ】 ●

関東人のチャンポンの味の基準は「リンガーハット」だが、確かに明らかに違う
(※関東ではチャンポンは日常食ではなかったが、リンガーハットが来て広まった)

これも製鐵の歴史に絡んで「北九州ならでは」があるのがいい


門司港焼きカレー(一軒訪問)

【門司港焼きカレー】ある喫茶店が余ったカレーで作ってみたら美味しかったので広まった。昭和30年代。

【よ】 ●

美味しいが、カレードリアとの違いが分からない

その喫茶店が始めた時は日本にまだカレードリアがなかった・・・ということなのか?


ぬか味噌炊き/じんだ煮(一軒購入)

【ぬか味噌炊き/じんだ煮】青魚をぬか味噌や山椒などと煮た料理。江戸時代には既にあったらしい。(旦過市場で購入して、他のお刺身と丼に)

【よ】 ●

「北九州グルメは普通の料理が多い」と思ったが、これは本当に「北九州ならでは」と思う

パンチがあるので苦手な人も多いかもしれない。オリジナルバージョンに加えて、マイルドなバージョンも作って広めては?

これも「ぬか味噌炊き」か「じんだ煮」か、名称を統一した方が北九州名物として広まりやすそう



最後に、初めて北九州を訪れたよそ者さんの感想は?

「北九州に住んでもいい」と思うほどに印象が変わった


滞在してみて、どうだった?


来る前は「身体に悪そう、暗そう」のイメージだったが、来てみたら街も空気も自然も綺麗だし、製鐵所を軌道に載せるまでの努力や、近代日本を築いた歴史を知って印象が変わった。そして、いろいろな自治体がある中で「北九州市は、市が前向きだ」と感じた。滞在中に目にした、河内貯水池のサイクリングロード、東田地区、門司港レトロ、リバーウォーク、そしてJTBの世界遺産バスツアーに登場した市の職員の人達のおもてなし。「北九州市は頑張ってる」と。もう、「北九州に住んでもいい」と思うほどに印象が変わった(笑)。


観光してみて、気づいたことは?

想像だが、北九州の観光促進は「市内=五区(七区)」の方を向いていて、肝心の集客する「市外」の方を向いていないのでは?と思った。五区のあらゆる情報を並列で発信されると、外の者には煩雑すぎて分からない。そこにさらに「映画の街」「アニメの街」などの情報も加わって、より混沌とする。

もし、北九州を観光で「広域にプロモーションする」ことを念頭に置いているならばだが、市としての「シンプルなアイデンティ」を打ち出した方がいいように思う。例えば、北海道にさまざまなセールスポイントがあっても「北海道=大自然」、京都も同様に「京都=古都」。「ならではの目玉」でイメージを打ち出して、他は目玉に付随させている。北九州には強力なコンテンツもあるし、空港、鉄道、港、高速道路などのインフラも揃っている。「このままじゃ、もったいない!北九州」と思った。

福岡市は観光で賑わっているが、実は「全国規模で有名な観光アイテム」はあまりないと思う。関東の多くの人が知っているのは、中洲、博多山笠、ヤフオクドーム位ではないか?しかし、屋台を含め、「全国規模で有名な食」がいろいろある。「胃袋を掴む」のは重要。

そして「北九州グルメ」としている、うどん、ちゃんぽん、焼きカレーなどはどれも「ランチメニュー」。もっと「夕食」や「飲み」にもふった方が集客や北九州滞在につながると思う。今回まわった中で可能性を感じたのは「角打ち」。例えば「ちょい飲み」が特徴のスペインバルのようにハシゴさせるスタイルで、市内のシャッター商店街を利用して、角打ちを含めた雑多を集積したナイトスポットを幾つか作る。(台湾の)士林夜市のように混沌とさせていい。大勢を受け入れられる飲食スポットがあれば団体客も呼び込みやすくなる。

福岡市が近くにあるのはチャンスだと思う。福岡市には国内外から多くの観光客が集まり、リピーターも多い。たとえば、二回目の訪問時は北九州に滞在させて、博多は最後の一泊に。ハワイのリピーターがマウイなど他の島に滞在して最後の一泊をオアフにしたりするように。


よそ者さんが着目した「北九州市は、産業用建造物と自然が織りなす光景がいい」。これをひと言で表す言葉は何だろう?「風光明媚」ならぬ「風工明媚」とか?(イマイチ) もし、北九州市の観光の目玉を今回のような産業関連にすることがあれば、北九州の歴史、現在の産業、そして自然も内包できる、このあたりが観光促進のキーワードになるのかもしれない。


※各コメントは、初めて北九州を訪れた一個人の感想です。


【関連リンク】

夜景鑑賞定期クルーズ(関門汽船)
http://www.kanmon-kisen.co.jp/contact/

祝、世界遺産登録!官営八幡製鐵所関連施設見学 公認バスツアー(JTB)
http://www.jtb.co.jp/tabeat/List.asp?TourNo=2cf66c6f9add4d0088be6bb5





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