TOTO株式会社 特販本部 特販第一部 特販第二課 係長
大沼寛隆さん(高50期)

Profile大沼寛隆(おおぬまひろたか)さん

1998年八幡高校卒業(高50期)
2002年慶應義塾大学経済学部卒業
TOTO株式会社入社 九州支社(福岡市)配属
2005年沖縄営業所配属
2008年九州支社(福岡市)配属
2011年特販本部(東京)配属

大学卒業後、TOTO株式会社に入社。以降、ずっと営業畑で活躍中。最初はマンションのオーナーやデベロッパーへの営業、その後は特約店へのルート営業、現在はゼネコンへの営業を担当している。小学2年生と0歳4ヶ月の二人のお嬢さま、奥さまとの四人家族。中央中学出身。

大半の人が生涯を通して毎日お世話になるTOTO製品。そのTOTOでご活躍中の大沼さんに最新のトイレ、浴室、キッチンの設備や高齢者に優しい設備をご紹介いただきました。お話を伺ったのは、TOTO、DAIKEN、YKK APの3社で共同展開する『TDYコラボレーションショールーム』。全国展開する中で、こちらの『東京センターショールーム』(東京都渋谷区代々木)が最大だそうです。水まわり(TOTO)、フローリングや内装ドア(DAIKEN)、窓や玄関ドア(YKK AP)などが一挙に検討できる、リフォームや新築の際に大活躍してくれそうなショールームでした。

マンション向け営業、特約店向け営業を経て、スーパーゼネコン担当の営業へ

TOTOに入社したのは何故ですか?

大学が経済学部だったので、周りは金融関係に進む人が多かったのですが、私は数字だけ扱うというのにはあまり興味がなく、目に見えるもの、特に生活に密着したものを扱うメーカーに就きたいと思い、家庭消費財メーカーとかも受けたのですが、地元北九州の会社ということもあってこの会社に決めました。


入社されてから今日まで、どのような仕事をされてきたのでしょうか?

入社してすぐにマンション担当の営業部門に配属され、マンションのオーナーやデベロッパーへの営業活動を行なっていました。マンションの購入検討者にとって、キッチンやトイレ、バスなどの水まわり品質は重要なポイントで、売上に大きな影響を与えます。そのため、特に新築マンションのモデルルームではお客さまに訴求しやすいデザイン性や機能性の商品を提案していく必要がありました。もちろん単に良いものではなく、建築予算に合わせて最適なものを提案しなくてはなりません。難しい仕事でしたが、この時学んだことがその後すごく役立ちました。

その後、特約店担当の営業部門に異動になりました。いわゆるルート営業で、案件は戸建ての新築や改修工事などです。ここでは特約店の方と一緒に休日出勤して、ショールームのイベントや展示会で見込み客を取り込むなど、地道な活動を繰り返しました。こうして特約店の方との濃密な時間を共有しながら互いに信頼しあえる人間関係を構築し、受注につなげていきました。

そして現在はゼネコン担当です。中でもスーパーゼネコンといわれる大手建設会社を担当しています。携わる案件も超高層ビルディングやホテル、病院など、とても大きな規模の施設になっており、当然取り扱う金額も高額ですし、営業のスタートから完成までの時間も長い、とてもダイナミックな仕事です。

さまざまな営業経験をお持ちですが、それぞれ取り扱う商品には違いがあるのでしょうか?

マンション、戸建て住宅、ビル、ホテル、病院など、それぞれの施設に合わせた数多くの既製品を持っていますが、今携わっている大型案件では施設に合わせて新しい商品の開発もします。特に高級ホテルのバスルームなどは、イチから設計、製作することがよくありますね。古い話ですがユニットバスという工法を開発したのもTOTOなんですよ。1964年に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの前年に竣工したホテルニューオータニに納入したものが第1号です。それまでのバスルームは湿式工法といって、モルタルやタイルなどを使って左官職人が仕上げていくのが当たり前でしたが、それではホテルの完成がオリンピック・パラリンピックに間に合いません。そこでできる限りの部材を工場であらかじめ組み立てておき、建築現場に運び込んで水道管と接合させるだけの工法にすることで非常に短い工期で多くの客室を完成させていくことができたわけです。

もっとも最近では個人住宅向けにデザイン性・機能性に優れた高付加価値の商品を開発し、その後にビルやホテル用に展開することも増えてきました。また、いわゆるバリアフリー新法が施行され、オフィスビルやホテルにおいて、お身体の不自由な方でも使いやすいトイレやバスルームを設置することが義務付けられています。この分野の製品の開発はまさに日進月歩です。単に販売・納入するだけでなく、ゼネコンや設計事務所に建築が始まる前の段階から設計協力もしています。

営業で多方面の顧客と接してきた大沼さんの将来の夢は?

最初は商品企画をやりたかったのですが、まずはお客さまに接することができる営業ということで、かれこれ13~14年営業をやっています。現在担当している物件営業というのは「勝つか負けるか」で、それはそれでやりがいや受注できた喜びもありますし、お客様に第一線で接する楽しさがあります。このままお客様の声が直接聞こえてくる所にいたいという気持ちもありますが、これまでの経験を活かし、いずれ企画もやってみたいと思っています。

清潔、快適、エコ、効率の追求がすごい、TOTOの最新設備

ところで、今日は水回りの最新設備のお話をとても楽しみに来ました。
まずは、世界に誇れる日本の快適なトイレについて教えてください。

では、清潔さを保つ最新技術についてお話しますね。
まずは、陶器に汚れを付きにくくする技術です。

『セフィオンテクト』と言う、陶器の表面をナノレベルでツルツルにするTOTO独自の表面加工です。表面の凹凸をナノレベルで無くすと汚れがグーンと付きにくくなるんですよ。また、このセフィオンテクトは陶器を焼く前に行う加工なので、その効果は半永久的に続くんです。

次は、便器を効率的に洗浄する『トルネード洗浄』です。従来の洗浄方式は水が下方向に流れますが、トルネード洗浄では渦を巻いた水流が流れていきます。このトルネード洗浄によって、従来より少ない水で汚れを効率的に落とせるようになりました。

そして、菌を付きにくくする技術です。水道水に含まれる塩化物イオンを電気分解して除菌成分の次亜塩素酸を生成し、使用後にそれを含む水を吹きかけて菌を付きにくくします。この水は『きれい除菌水』と言いますが、薬品も洗剤も使わずに除菌ができる環境に優しい技術です。

あと、これまで掃除しにくかった「フチ」のない便器も登場していますよ。

イメージ以上にハイテクで驚きました!浴室についてはどうでしょう?

シャワーの節水が進化しています。
大幅に節水しているのに浴び心地はそのままというシャワーです。『エアインシャワー』と言って、水滴一粒ずつに空気を含ませて水滴を大粒化させているので水量の少なさを感じさせないんですよ。

あと『ほっカラリ床』という床が浴室の快適さと清潔さを進化させました。
まるで畳のような柔らかい感触で滑りにくく、物を落とした時も音がしにくいんです。また、床の溝に水滴が引き込まれ、その大半が溝を伝って排水されるようになっています。床に水が残らないことで清潔さを保てます。

最後に、浴室の扉。カビが付きやすいゴムパッキンを無くした浴室扉が登場していますよ。

浴室もそんなに進化していたんですね。キッチンはどうでしょうか?

スペースの有効活用や作業効率のアップができる、TOTOにしかないA型キッチンをご紹介しますね。

キッチンのタイプには、I型(シンク、調理台、コンロなどがまっすぐ並んだキッチン)やL型(シンク、調理台、コンロなどが直角に並んだキッチン)などもありますが、A型はL型を進化させたキッチンなんです。


L型の場合はコーナー部分を有効活用しづらいですが、A型だとその部分も作業と収納に使えます。また、そこでまな板に向かえば、体の向きを変えなくてもコンロが見えるので、火加減を確認しながらの作業が可能で効率がアップします。

効率アップと言えば、『水ほうき水栓』というのもあります。シャワーヘッドが細長い長方形になっていて、水がほうきのように広がり、掃くようにシンクの汚れを効率良く流せます。そして、『すべり台シンク』。シンクの片隅に継ぎ目のない排水口があり、シンク全体からその排水口へと一気に勢いよくゴミを流せます。継ぎ目がないので排水口周りの汚れも留まりづらいですし、手入れもし易いです。

介助する側にも優しい、高齢者向け設備

高齢者に優しい設備はどのようなものがありますか?

トイレの場合は、まず「手すり」や「トイレリフト」ですね。便器脇の手すりはハネ上げ式で使わない時は畳んでおけます。トイレリフトは、電動で便座が昇降し、立ち上がる時の足腰の負担を減らしてくれます。実際に使ってみると私達でも足腰が楽なのが分かります。

また、寝たきりの場合はベッドの横に設置できる「ベッドサイド水洗トイレ」があります。従来のバケツタイプのポータブルトイレは介助する側の負担が大きいので、介助される側も申し訳ない気分になりますが、この画期的なトイレは双方のことを考えて開発された製品なんです。ベッドから1~2歩で用を足せるので、完全な寝たきりの回避にもつながります。もちろん脱臭機能も付いています。排泄物を粉砕して流すので配管が細くてもよく、簡単な工事で設置できるというのも特長です。これは特別養護老人ホーム「七日町こまくさ園」のアイディアで開発された製品で、今年、介護保険の対象にもなりました。

キッチンについては、椅子に腰かけて調理できたり、リモコンを使って電動で昇降できる食器乾燥庫などがあります。これらは高齢者の方だけでなく、誰にとっても優しい設備です。

次に浴室用ですが、電動でシートが昇降する「バスリフト」があります。ひとりで入浴する場合は浴槽の出入りが楽になりますし 介助が必要な場合は介助者の負担軽減につながります。電気工事も不要ですし、介護保険でのレンタルも可能な製品です。


これからのリフォーム、新築、住宅購入は将来を見据えて

ところで、これからリフォームしたり、新築したり、戸建てやマンションの購入を考えている同窓生にアドバイスをお願いします。

せっかく投資するなら、将来を見据えてやることをお薦めします。我々はリフォームすることを「リモデル」と呼んでいるのですが、高齢になってリモデルのために再び投資しても使える期間が短いのではもったいないですよね。戸建てやマンション購入の場合はバリアフリーに目を向け、「段差がないか」「将来のためトイレに手すりがあるか」、そして、ぜひ温度のバリアフリーにも目を向けて「浴室換気暖房乾燥機が付いているか」などをチェックするといいと思います。


この8月に地元北九州にオープンする『TOTOミュージアム』について教えてください。

『TOTOミュージアム』は創業百周年を記念して設立するミュージアムで、第一展示室では創業のルーツと歴史を紹介しています。1912年、日本にはまだ下水道の概念さえ浸透していなかった時代、衛生陶器を開発するための製陶研究所を設立しました。その2年後に国産初の「陶製腰掛水洗便器」が完成したものの、当時その需要はゼロに近かったので、食器の生産販売で資金を作り開発を続けていました。第二展示室ではTOTOがつくり出した水回りの文化や歴史の数々、礎を築いた先人の想いを伝えています。第三展示室には、アメリカ・中国・アジア・オセアニア・欧州など、世界で販売している製品をエリア別に展示しています。また先ほど述べましたホテルニューオータニに納入したユニットバスの第1号も、このミュージアムで見ることが出来ます。帰省の際にぜひ訪れてみてください。


今日は大変勉強になりました。最後になりますが、TOTOの第一線の営業で活躍する大沼さんの休日の過ごし方は?

最近は街歩きです。いつ転勤になるかわからないので、東京にいられるうちに、いろんな街の散歩を楽しんでいます。特に中目黒から代官山辺りが気に入っています。あとはゴルフですね。なかなか上手くならなくて止めてたんですが、仕事の付き合いでやむを得ず再開したところです。また挫けるかもしれませんが。


これまで各地でお客さまと接してきた大沼さんが企画するTOTO製品が登場する日を楽しみにしています!
本日は、本当にありがとうございました。


【編集後記】

  • 取材の中で伺った興味深い雑談を紹介しましょう。「トイレは陶器だから焼くと小さくなる」。焼く前より13~15%縮むそうです。それも平均的に縮むわけではないので、単純に15%大きい型を作ればいいというものでなく、そういう難しさもあってなかなかほかの会社が参入できないのだそうです。なるほど!
  • アメリカではテレビコマーシャルでトイレの映像を出しづらいそうです。「トイレみたいなものをテレビで流すなんて」と苦情もあったとか。そこでTOTOは、ホテルや空港などの主要施設に商品を納入して使っていただく環境を作り、じわじわ広げていく戦略を取っているとのこと。今年過去最高を記録しそうな訪日外国人の急増も「じわじわ」につながりそうですね。
  • だんだん増えてきている多機能トイレ。車いす対応は勿論、オストメイト(病気や事故で消化管や尿管が損なわれたため、腹部などに排泄のための人工肛門や人工膀胱を造設した人)用の汚物流し台、乳幼児用おむつ交換台など、さまざまな機能を併せ持つものが増えてきていますが、一方でとても便利なため健常者が使用することが増え、この場所でしか用を足せない身体の不自由な方が使えないことが増えているのも事実。今後は『多機能トイレ』から『機能別トイレ』に変えていく方針だそうです。また、男性用トイレにもおむつ交換台を増やしているようです。
  • TOTOは故郷の北九州市に本社があり、製品を通じて日常的に間接的に関わっているメーカーですが、今回大沼さんにお話を伺えたことで、TOTOの「快適な生活文化を創造する思い」に直接触れることができました。猛暑の中、休日にインタビューに応じていただいた大沼さんに感謝します。




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