住んでいるからこそ知っている・・・関東各地のおすすめスポットを同窓生に紹介していただいているこのコーナーですが、新型コロナウイルスの影響で取材を控えております。今回も引き続き特別企画として、広報委員の筆者が住んでいる『行徳・妙典』を紹介します。
江戸時代から庶民のレジャーのための主要道として栄えた意外な歴史をご紹介します。

【案内人】高34期 三橋正司

東京から15キロ圏内、高速道路、鉄道も複数あることの便利さで、この町に住んで21年になる筆者ですが、これまでは自宅と最寄り駅の往復を繰り返すのみでした。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が2か月近く続いたこともあり、運動不足を解消するために始めた自宅近くの散歩によって、はじめて自分の住む町の歴史に触れることになりました。

寺町通り

『行徳・妙典』の名前から連想される方も多いでしょうが、寺社がとても多い町です。室町時代、このあたりに住んでいた修行僧が「行徳さま」と住民に慕われていたこと、そして法華経が「妙なる経典」であると言われたということが地名の由来であるようです。
昔から「戸数千軒寺百軒」と言われたほど数多くの寺があったようで、今でも30以上の寺、15以上の神社があります。その中でのメインストリートともいえるのは『寺町通り』。ここには徳川家康が帰依したという『徳願寺』があります。山門には立派な仁王像が立っており、また本尊の阿弥陀如来像は北条政子が運慶に彫らせたといわれています。この寺には剣豪 宮本武蔵も滞在していたらしく武蔵の落款や供養塔も残されています。その近くには『妙応寺』という一風変わったお寺があります。七福神全員の像が並んでおり、この寺ひとつで七福神参りができるそうです。なんだか古くから続く商店街の中にショッピングモールが出店したみたいな印象です(笑)。


常夜灯公園

行徳は古くは塩田として栄え、『塩浜』『塩焼』などの地名も残っていますが、ここから江戸城に塩を運ぶための江戸川の水路も整備されてきました。この港は新河岸と言われて、日本橋小網町から『行徳舟(ぎょうとくふね)』が定期運航されて栄えていたようです。
しかしなによりもその繁栄のきっかけとなったのが、成田山新勝寺詣で。庶民の移動が制限されていた江戸時代に唯一の例外として認められていたのが参拝でした。もちろん信仰心もあったでしょうが、江戸から近く、道が平坦で、なにより行徳まで船で来ることができる成田山新勝寺への往復3泊4日の小旅行は、江戸時代後期の庶民のレジャーとして大流行したようです。そのおかげで街道沿いの宿屋や飯屋も繁盛・・・まるで今のGO TOトラベルの原型のようです。
文化9年(1812年)にこの港の安全のために成田山に奉納されたという常夜燈、いまでは『常夜灯公園』として地域住民の憩いのスポットとなっています。船で到着した参拝客の多くが腹ごしらえに立ち寄ったといわれる『笹屋うどん店』も建物はそのまま残っています。
ここから成田山新勝寺に向かう道は『行徳街道』と呼ばれていたようですが、その道と並行して『権現道』が残っています。これは徳川家康が大好きだった鷹狩りのために何度も通った道と言われており、通り沿いにある『法泉寺』には家康が休憩で三度立ち寄ったと言われています。将軍様から庶民にいたるまでレジャーで栄えた町だったようです。
江戸時代、仲間がわいわい言いながら成田山まで向かっていったこの道・・・コロナ渦で親しい友人との会合も控えている今だからこそ、その光景に思いを馳せてしまいます。



行徳神輿ミュージアム

「戸数千軒寺百軒」と言われたこの町には、腕に覚えのある仏師や宮大工のほか多くの建具職人も集まってきたようです。その技術を活かした地場産業として神輿づくりも盛んになってきました。なんと日本の神輿の80パーセントは行徳で作られているとのことです。
ここで神輿づくりを行っている有限会社中台製作所さんが開設した神輿ミュージアムがあります。中に入ると大きな神輿はもちろん、のみなどの道具や細かい部品などが展示されていて楽しめます。神輿の中を見る機会はこれまでなく、その複雑な造作に見入ってしまいました。また工場見学ツアー(有料、要予約)もやっており、職人さんたちの繊細な神輿づくりの技を間近で見ることができます。


番外編 カリフォルニアロード

寺社の多いこの町に、なぜか唐突にカリフォルニアロードという道があります。市川市が米国カリフォルニア州ガーデナーシティと姉妹都市ということから名づけられたそうですが、まったくカリフォルニアの趣はありません。それどころか漢方薬局、インド料理屋、韓国食材店などが立ち並び、かなりカオスな状況(笑)。でもこの道の終点にある江戸川河川敷は海まで1キロの距離で、満ち潮のときは川の流れが上流に向かいます。それと同時に潮の香も漂ってきます。
その他周辺の道にもマリンアベニュー、ガーデナーアベニュー、ハーバーロード、サンセットストリートなどが名づけられていて、道案内するたびに少し恥ずかしい気分になります(笑)。




【編集後記】

「コロナ禍で取材に行けない!」2020年の広報委員会にとって最大の悩みどころでした。しかし簡単に屈しないのが八高魂(笑)・・・ならば広報委員が住んでいるところを自分で取材しよう!と決め、今回で4回連続で広報委員が案内役を務めることになりました。そんなわけで筆者にもお鉢が回ってきましたが、自分の足で歩いてみて初めて自分の住む町の歴史にも触れることができました。自分にとっては選択して住み始めた行徳・妙典ですが、私の子供にとっては唯一無二の故郷の町でもあります。来る2021年、コロナが去っていくことを願うばかりですが、自分の町を大切にしていく思いはずっと持ち続けていきたいと思います。


 回ったスポットの住所や営業時間やURL

1寺町通り

2徳願寺
市川市本行徳5-22
TEL:047-357-2372
https://maruchiba.jp/sys/data/index/page/id/16007

3妙応寺
市川市本行徳6-5
TEL:050-8890-8740
https://br-promotion.jp/myouohji/

4常夜灯公園
市川市本行徳33-1

5笹屋うどん跡
市川市本行徳36-18

6権現道
市川市ウォーキングマップ 情緒ただよう寺町をめぐるコース
http://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000316076.pdf

7行徳神輿ミュージアム
市川市本塩21-3
TEL:047-357-2061
開館時間 9:00~17:00
休館日 日曜・祝日・年末年始
入場料 無料(神輿製作ガイドツアー10名まで2000円 11名から1名につき200円)
有限会社 中台製作所 http://www.mikoshiya.com/museum/

8カリフォルニアロード
東行徳商店会 ロードマップ
http://www.jbs-co.com/hg/map.html







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