岡部和世さん(高35期)


Profile岡部和世さん

1983年 八幡高校卒業(高35期)
1987年 鹿児島大学卒業後、外資系医療(医薬品+医療機器)メーカーに入社
1992年 同企業を退社し、ドイツ留学
1994年 帰国後、外資系非鉄金属製造・輸入販売会社に入社
2015年6月 はじめて知床を訪れる
2015年10月 2度目の知床訪問
2016年2月 北海道誠鏡会総会参加に合わせ、3度目の知床。以降2019年までに、合計23回知床を訪れる。次は2020年2月訪問予定

大学卒業後、外資系医療メーカーに入社。5年で退職し、2年間ドイツ留学。帰国後は外資系非鉄金属製造・輸入販売会社に入社し、現在も勤務。2015年夏に知床半島初訪問。以降2019年10月までに23回知床を訪れている。引野中学出身。



2019年11月某日、知床への旅を続ける岡部さんに、知床の魅力やご自身がヘビーリピーターとなったきっかけ、これから知床を訪れたい方へのおすすめのスポットや現地での楽しみ方などを伺いました。


知床って、どんなところなのですか?

まずは知床の基礎知識から教えてください。

知床半島は北海道の最東北端にある長さ約70kmの細長い半島で、縦半分に割った形で東南側を羅臼町、北西側を斜里町で構成されています。地名はアイヌ語で地の果てを意味する「シリ・エトク」を語源としているそうで、冬に流氷が来る場所としては北半球最南端、原生林がある場所としては日本最北端です。1964年に知床国立公園に指定され、2005年には豊かな生態系と生物の多様性、科学的調査に基づいた保護管理体制が評価されて、世界自然遺産に登録されました。実際、本当に多種多様な生物が生息していて、少し標高の高いところでは高山植物が可愛いらしい花を咲かせ、海にはシャチなどの海獣類、海鳥やオオワシ、そして秋にはサケが産卵のために帰ってきます。森にはヒグマ、エゾシカなどの哺乳類やたくさんの小鳥たちがいて、まるで絵はがきそのままのような景色が広がっています。

知床の位置


岡部さんと知床半島の出会い

岡部さんが知床に出会ったきっかけは何ですか?

もともとあちこち出かけるのは好きなんです。以前はスキューバダイビングをやっていて、週末は伊豆、長い休みの時は南の島に出かけていました。沖縄、パラオ、モルジブ、タヒチ、フィジー、パプアニューギニア等々。でも、仕事が忙しくなり長い休みが取れなくなって、しばらくはお伊勢さんや出雲大社、安芸の宮島、高千穂峡など、大きな神社仏閣巡りをしていました。神社仏閣巡りって半分山登りみたいなところがありますよね。そんな話を知り合いにしたら、「知床行ったことないでしょ?行ってみなよ」とすすめられて。じゃ行ってみようかと下調べもせずにいきなり行くことにしたんです。それが2015年の初夏。その時は、まず旅行会社に行って、日程となんとなくの希望だけ伝えて飛行機や宿など手配してもらいました。実はその時点でも、そこで何ができるかイメージできてなかったのですが、現地にはガイドさん付のツアーがいろいろあるから参加すればいいや、とりあえず行ってみようということで決行しました。そしたら思いもよらず面白くて。すっかりハマってしまい、2015年から2019年にかけて合計で23回も訪れることになったんです。

4年で23回? そんなにハマった理由はなんでしょうか?

もちろん楽しかったからなのですが・・・。2回目、3回目でなぜか「行くしかない」状況が続いたことも大きいかもしれません。はじめて訪れた時の羅臼湖に行くツアーでは、霧が濃くて羅臼湖はおろか知西別岳も、途中で見えるはずの羅臼岳も国後島も見ることができなかったんです。羅臼湖の看板しか見られなかったのが残念で、「もう一回行かなきゃ!」と4ヵ月後の10月にまた行きました。そこでガイドさんの「冬の知床が一番好き。海が流氷で覆われると波がなくなって音がなくなるの」という話を聞いて、興味を覚えたものの、その時は「さすがに-20℃じゃ行かないなあ」と思っていました。ところが、そのタイミングでなんと北海道誠鏡会の総会が2月に網走で行わることになり、北海道にいる同期の手伝いも兼ねてみんなで網走ツアーをしようと仲間で話が盛り上がって。網走と知床って近いんですよ。「これは私に知床に行けってことなのよね」と3度目の知床訪問となったのです。しかし、その年は流氷が来るのが遅くて、目当ての流氷は見られず・・・。その代わりに見たこともないほどキレイな青空と青い海の景色やオオワシやクマゲラが見られて、知床の冬の楽しさは堪能できましたが、でもやっぱり流氷は見たい!それで来年も来るねと、通うようになりました。

岡部さんにとって知床の魅力とは?

23回通って、改めて感じる魅力とは?

生きるエネルギーが集中しているところでしょうか。冬は本当に厳しいので、生き物たちがとにかく懸命に生きている。「子孫を残す」、それだけのために迷いなく懸命に生き抜く姿に、心を動かされます。私たち人間はいろんなことに迷ったり悩んだりしているけれど、生きるエネルギーを目の当たりにすると、心身からいらないなものが出ていくようで内側からキレイになれる気がします。胸を張って背筋を伸ばして歩こう、という気持ちになり、毎回エネルギーチャージして帰っています。
また、いつも新しい発見があることも魅力です。行く度に「へえ、そうなんだ」の連続なんです。自然のシステムってよくできてるなと感心することもしばしばです。例えばクマの出産。6月から7月の初夏が繁殖期なのですが、受精卵は着床せずに子宮内にとどまります。そして秋、冬ごもりの前に十分な栄養と脂肪を蓄えた場合にだけ子宮に着床し、冬眠中に出産します。栄養不足だと着床(妊娠)せず、さらに赤ちゃんは親の1/500〜1/1000程度の体重で生まれます。だから、冬眠前の秋の蓄えだけで飲まず食わずで子育てできる・・・。そんなふうに、知識が少しずつ増えていくのも楽しみですね。
そして「すべてのものが繋がっている」ことを実感する場所でもあります。最初の基礎知識でお伝えしたように、知床はその生態系、生物多様性、自然管理体制が評価され、世界自然遺産に登録された場所です。流氷が知床の海を豊かにし、それを食べる海の生き物たちを支え、サケは産卵のために生まれた川を遡上し、山の生き物たちの糧となり、死んだ後には土になって森を豊かにする、何一つ無駄なもののない完全循環型の世界です。だからこそ、ほんの少しバランスが崩れただけで、その世界は大変な影響を受けます。例えば、昨年と一昨年、2年続けて雪が少なく、春になって雪解け水だけでできる沼は、早く干上がってしまいました。そのため、そこで生まれたエゾアカガエルやエゾイモリの幼生(オタマジャクシ)のほとんどがオトナになれずに死んでしまいました。彼らの寿命がだいたい3年だとすると、次の春にも同じことが起きれば全滅してしまいます。これらの生き物はキタキツネなどの餌になるものですから、彼らも影響を受けるはずです。知床に通うようになって、私自身「自然」や「地球環境」について、これまでよりさらに深く向き合うようになりました。


最後に、初めてでも楽しめる知床の訪れ方を教えてください。

最近は、知床は人気で、大手の旅行会社でもお手軽なものからワイルドなものまでさまざまなツアーを用意していますので、まずは調べてみてはいかがでしょう。あまり歩かなくていいバスツアーの場合には、知床五湖と知床八景を巡るツアーがあるのではないかと思います。森を歩きたい方は、ネイチャーガイドまですべてスケジュールされたパックツアーならラクですし、地元の観光案内所に行けば、ガイドさんを斡旋してくれますので、宿と交通だけの基本ツアーでも大丈夫かとは思いますが、夏休みシーズンは念のため予約して行かれることをおすすめします。
知床観光のハイシーズンは2回あって、6月から10月初旬までの春~秋と、2月から3月初旬までの冬。春夏の森では生命のイキイキした姿や美しい青と緑の世界、船に乗って沖に出ればイルカやクジラを見ることもできます。初夏なら、可愛らしい動物の赤ちゃんたちに会えるかもしれません。7月上旬から9月中旬は羅臼岳や硫黄山の登山が楽しめます。秋には紅葉とサケの遡上。クマが手で鮭を捕る姿を見たことがあるのですが、中には不器用なクマもいて、彼らには気の毒ですがなんともユーモラスな姿が微笑ましかったです。冬は真っ白で静かな世界が美しいです。雪の上にはいろいろな動物たちの足跡があり、空にはオオワシやオジロワシが悠然と滑空しています。そして、やはり流氷は見てほしいと思います。海の上を歩く”流氷ウォーク”はかなりの人気で、私も冬に行くたび童心に返って楽しんでます。もしかしたら、流氷の上で日向ぼっこしているアザラシを見られるかもしれませんよ。
ウトロ温泉もおすすめです。お湯に浸かりながらオホーツク海に沈む夕日の眺めは格別ですし、もちろん、新鮮な魚介類も最高においしいです。
私としては、春夏秋冬、全く違う風景ですのでどれも捨てがたいです。同窓生の皆さんも知床に興味をお持ちなら、数回足を運んでもらいたいです。知れば知るほど奥が深くてロマンがあります。例えば流氷はどうやってできるか、不思議ですよね?知りたい方は最後の関連リンクでいろいろ情報を紹介してもらいますのでぜひご覧下さい。そして、私に続いてリピーターになりませんか?人生観が変わりますよ。


貴重なお話をありがとうございました。



【編集後記】

  • 落ち着いた雰囲気の岡部さんですが、とってもアクティブ。背筋もスッとしてとても魅力的な大人の女性でした。
  • 知床(ウトロ)までのルートは女満別空港が一番近く便利。羽田から1日6便あり、ハイシーズンならウトロ道の駅の観光案内所のあるウトロまで直行のバス(片道約2時間)があるそうです。札幌からウトロ行きの夜行バスも出ています。羅臼側には知床横断道路で繋がっていますが、冬季は通行止め。中標津空港行きの便は1日1便です。もちろん、各空港でレンタカーを借りて自由に動くのもおすすめだそうです。
  • 知床に出会ってから森林や動物への興味が強くなった岡部さん。毎週のように目黒の国立科学博物館附属自然教育園に通っているそうで、写真も趣味のひとつになったそうです。

 

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