鶴見は横浜市の北東部に位置し、沿岸部には日本の近代化の礎となった京浜工業地帯、山の手は首都圏の中でも緑豊かな丘陵地、その間を歴史ある旧東海道が通っています。
工業地帯を抱えていろんな人が集まった街は、故郷北九州を思い出させる風景がいたるところに詰まっています。複数の顔を持つ「鶴見」の不思議な魅力を紹介していただきました。

【案内人】高23期寺居史子さん

八幡高校卒業以来関東の住人になり、鶴見に住み着いてはや44年。「海があって山(緑)があって交通の便が良いから」と思って選んだ町でしたが、今回街歩きしてみて改めて「工業都市八幡」に似ていると思いました。「八幡」は遠くなりましたが、「八幡のイメージ」は私の中で身近なこの街で、これからもずっと残って行くのだと思うと嬉しくなりました。

おすすめ・その1

改札を出ることが出来ない「鶴見線 海芝浦駅」

鶴見線は横浜市と川崎市という政令指定都市内だけを走っています。しかしその沿線には殆ど工場しかないため、朝夕の通勤時間帯こそ混雑するものの、それ以外の時間帯には利用客が少なく、すぐそこにある大都会の喧騒などまるで無縁であるかのような時間が流れています。ちなみに私たちが訪れた土曜日の昼間は、2時間に1本の運行ダイヤでした。
鶴見線の特徴は、駅が個性的。起点の鶴見駅以外は全駅無人駅で、駅舎の造りもレトロ感たっぷりです。終着駅の「海芝浦駅」は、出入口が東芝の工場と直結。そのため、同社関係者でないと駅から出られないという変わった駅です。また、ホームが京浜運河に面しており、臨海工業地帯や鶴見つばさ橋などが一望できます。手軽に旅行気分を味わいたいなら鶴見線がおすすめです。

おすすめ・その2

広大な敷地と溢れる緑、曹洞宗の大本山「總持寺」

京浜工業地帯から旧東海道を挟んで山手側には、広大な敷地に深い緑にあふれた曹洞宗の大本山「總持寺」があります。同じ鶴見に住む、寺居さんと同期の藤真知子さん(高23期)も同行し、總持寺を案内していただきました。藤さんによると、修行僧が朝のお勤めですべての建物の床を毎日雑巾がけしているとのこと。ピカピカに黒光りした長い廊下がとても印象的でした。
曹洞宗は大本山が二つあります。ひとつは福井県にある永平寺、そしてもう一つがここ、總持寺です。広大な敷地は一般にも開放されており、市民の憩いの場となっています。敷地の一角には故石原裕次郎のお墓があり、お花をお供えに来るファンが絶えないようです。

おすすめ・その3

昭和にタイムスリップする「国道駅」から特徴ある鮮魚店が軒を連ねる「生麦魚河岸通り」へ

鶴見線の無人駅のひとつ、国道駅のガード下に一歩足を踏み入れると、昭和時代にタイムスリップしたような不思議な感覚にとらわれます。開業した1930年以来一度も改築された事がなく、当時のままの雰囲気を残しているので、いろいろな映画やドラマのロケ地として使われています。駅名の由来は鶴見線と京浜国道(当時の国道1号)の交点にあったことから命名されたそうです。
国道駅のガードから生麦方面には「魚河岸通り」が延びており、その狭い通りの両側には、江戸前で採れたアナゴ専門店、貝類の専門店や海苔屋さん等、特徴ある鮮魚店がびっしりと軒を連ねています。営業時間は午前の早い時間帯のみですが、新鮮な魚を買うにはここがお勧めです。
いまではとても狭く感じるこの通りも江戸時代は交通の拠点として栄えた旧東海道で、「薩英戦争」のきっかけとなる生麦事件もこの通りで起こりました。

おすすめ・その4

ここでしか味わえないビールがある「キリンビール横浜」

日本のビール産業の歴史をさかのぼると、1869(明治2)年にノルウェー人によって開業された醸造所「SPRING VALLEY BREWERY」に辿り着きます。「キリンビール横浜」は、その土地・技術・スピリッツを引き継いでいるのです。そんな日本ビールの始祖の名を冠したビアレストラン「スプリングバレーブルワリー横浜」では、ホップの苦味がきいたピルスナーや、ラズベリー果汁を加えて醸造したフルーツビールなど、新次元のビールを堪能することができます。
また「キリンビール横浜工場」では、ビールの製造工程を見学することができます(要予約)。一番搾り麦汁と二番搾り麦汁の飲み比べや、麦芽の試食、ホップの香りを体験できるツアーはいかがでしょう。

おすすめ・その5

沖縄や南米の本格的なお土産が買える「仲通り商店街」

遠くから見るとどこでも見かけるような商店街ですが、一歩足を踏み入れると軽いカルチャーショックを覚える町、「仲通り商店街」。実際に歩いてみると南米系のレストランや食材店が多いことに驚きます。「Paraiso Brasil(パライゾ・ブラジル)」もその一つ。ブラジル料理が味わえるほか、ブラジル産の「ココナッツジュース」などの食材も手に入ります。
「おきなわ物産センター」はこの商店街のランドマーク的なお店で、「海ぶどう」や「沖縄そば」など沖縄関連の食品が多数そろっています。また、併設のレストランでは「らふてー定食」をはじめ本格的な沖縄料理が味わえます。
なんともディープな街です!鶴見駅東口より少し歩きますが、訪れる価値は大いにあります。その雑多なごちゃごちゃ感、どこか北九州を思い起こさせられました。


【編集後記】

鶴見線の「都会のローカル線」と呼ばれる非日常性は鉄道ファンの間でも有名です。元「鉄ちゃん」の筆者も、古びた駅舎にポツンとある年代物の木製のベンチに感動したり、電車内で運転席の後ろのガラス越しに計器類をじっくりと観察したりして、取材そっちのけで鶴見線を堪能させてもらいました。

今回一緒に案内していただいた藤さんは、寺居さんの薦めもあって鶴見に引っ越しされたそうです。そんなエピソードからもお二人の仲の良さが伺い知れました。そんな仲の良いお二人ですが、二人がお互いを知ったのは関東誠鏡会の当番幹事の時だったそうです。ここにも当番期がきっかけの新しい出会いがありました。いいですね。

回ったスポットの住所や営業時間やURL

A鶴見線「海芝浦駅」
神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目
鶴見線時刻表
平日 http://www.jreast-timetable.jp/1508/timetable/tt1025/1025010.html
土・休日 http://www.jreast-timetable.jp/1508/timetable/tt1025/1025011.html

B鶴見線「国道駅」
神奈川県横浜市鶴見区生麦5丁目

C曹洞宗の大本山「總持寺」
神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-1 TEL : 045-581-6021
http://www.sojiji.jp/

D生麦魚河岸通り 「生麦魚介商組合」
神奈川県横浜市鶴見区生麦5-18-25 TEL : 045-503-1030
【営業時間 AM:8:30~AM11:00】
http://www.navida.ne.jp/snavi/3840_1.html

E生麦事件記念碑
神奈川県横浜市鶴見区生麦1-16

Fキリンビール横浜工場
神奈川県横浜市鶴見区生麦1-17-1 工場見学予約 : 045-503-8250
【休館日】月曜日休館(祝日の場合は営業、次の平日が休館)、年末年始休館 ※臨時休業あり
http://www.kirin.co.jp/entertainment/factory/yokohama/
ビアレストラン「スプリングバレーブルワリー横浜」 予約 : 045-506-3013
営業時間11:00~22:00 ※定休日 : 月曜日(祝日は営業)
http://www.springvalleybrewery.jp/yokohama/#_ga=1.78258710.300910369.1438505981

GParaiso Brasil(パライゾ・ブラジル)仲通り店
神奈川県横浜市鶴見区仲通2-69-4 TEL : 045-503-6327

Hおきなわ物産センター
神奈川県横浜市鶴見区仲通3-74-14鶴見沖縄県人会館1階 TEL : 045-504-7816
営業 : 10:00-20:00/年中無休
http://www.okinawa-bussan.com/





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