谷口淑子さん(高45期)


音楽もコミュニケーション

Profile谷口淑子(たにぐちとしこ)さん

1993年 八幡高校卒業(高45期)
1998年 昭和音楽大学ピアノ科卒業
2004年 『NPO法人北九州リバーサイドミュージックBOX』理事長就任
2008年 音楽活動10周年記念「谷口淑子ピアノリサイタル」を開催
2009年 高見の森保育園園歌作曲
2010年 日本青年会議所主催・青年版国民栄誉賞「人間力大賞2010」にノミネート。「会頭特別賞」受賞
2011年 司会業をスタート
  

結婚披露宴での司会をはじめ、「コンサートのための司会者」として音楽家としての専門性を生かしながら活動中。大蔵中学校出身(高校入学前に竹下町に転居)

2023年7月某日、オンラインにて、ピアニスト、司会業、「ふくおか市民政治ネットワーク・北九州」代表とマルチに活躍する谷口淑子さんを取材しました。ふるさとに根づいた独自の音楽活動を展開するとともに、政治を生活に引き寄せる活動を精力的に行う谷口さんに、音楽を通じて人と人とをつなぐ達成感、そして関東誠鏡会への意気込みについてお話を伺いました。


ピアニスト谷口淑子さんについて

ピアノとの出会いについて教えてください。

4歳でピアノを習い始めたのですが、小学5年生の時には「将来の夢はピアニスト」と書くほどで、とにかくピアノ大好きな子どもでした。八幡高校を選んだのもピアノの練習時間を確保できる一番近い高校という理由からで、そのために一生懸命受験勉強に励みました。入学後は勉強そっちのけでピアノまっしぐら。八高の先生は音楽を目指していることをご理解くださり、1年生で数学と理科を諦め、音大受験のために東京でのレッスンなどで学校を休むこともありましたが、温かく見守ってくださり感謝しています。大学は愛知県立芸術大学を第1志望にしたものの、残念ながら希望は叶わず。1浪して昭和音楽大学ピアノ科に入学しました。



まさに“まっしぐら”ですね。その後も順調にピアノ人生を歩まれたのですか?

それがですね・・・。大学3年生の時に「自分は何の為にピアノを弾いているのか」という根源的な悩みにぶつかってしまい、ピアノが弾けなくなってしまったのです。なんとか卒業をしたものの、大学院への進学を諦め八幡で実家の生花店を手伝いながらピアノとは無縁の生活を2年ほど送っていました。そんな私を心配した高校の同期の親友が、ある朝、自分の出身の保育園に遊びに行くから一緒に行こうと連れ出してくれました。気軽な気持ちで行ったのですが、予期せずピアノを披露する流れになってしまい・・・。周りに促されて覚悟を決め、弾くことになりましたが、子どもたちにウケそうなアニメソングなど知りません。結局、ロシアの作曲家ラフマニノフの「プレリュード」というピアノ曲を弾きました。演奏を終え、ホッとしたところで顔を上げると、4才ぐらいの園児の女の子が立ち上がって「いい気持ちがした!」と言ってくれたのです。
運命だったのでしょうか。それが、人生最大の転機となります。なぜ自分はピアノを弾くのか、ピアニストを目指したのかを思い出す機会となりました。ピアノを弾くことで誰かに喜んでもらいたい、ピアノを通して何かの役に立ちたい…。ピアノを始めた頃の気持ちが蘇ってきたのです。何の忖度もない子どもが言ってくれたこともあって、素直に受け止めることができ、「もう一度ピアノを弾こう」と思える私がいました。そうして、再び、ピアニストとしての道を歩むことになりました。

ピアニストとしては現在どんな活動をされているのですか? 谷口さんらしさとは?


音楽の楽しみ方は大人も子どもも一緒です


大きな劇場より、野外でのコンサートといったクラシックの魅力を身近に感じていただけるような活動が私らしいスタイルでしょうか。お客様も元々のクラシックファンというよりクラシックに縁のない方、知らない方に好きになっていただきたいという思いが強いです。とはいえ、ゼロを1にするのは簡単なことではありません。代表的な活動の一つだった「リバーサイドコンサートin紫川」も、最初は本当に大変でした。地域の異業種交流会などあちこちに顔を出すなどPRしていったのですが、「演歌だったら聞くんだけどね」というような方達に、「1回の飲み会代でクラシックコンサートが聴けます」と一生懸命アピールして少しずつ少しずつ輪を広げていって。それだけに、来てくださった方から「谷口さんのおかげで、今まで全く興味なかったクラシック音楽の世界の入り口を見られた。すごくありがたい。」といっていただけた時は嬉しかったですね。やっぱりゼロを1にするっていう達成感は大きいです。これからもクラシックに縁のなかった方が、クラシックを知り、魅力を感じていただけるような場を作っていきたいと思っています。



ピアニストと司会業、市民政治活動との両立と「これから」について

司会業はどんな形で活動されているのですか?

司会業を始めたのはひょんなことがきっかけでした。音楽活動を続ける中で、MCの方を紹介していただく機会があって、予算的に厳しいのでお断りするつもりでお会いしたら「谷口さんが司会をされたらどうですか」とお声をかけていただいたのです。考えてみたら、演奏する曲の生まれた時代背景や作曲家のキャラクターを伝えることでよりクラシックを身近に感じていただくことができるのではないか。クラシック音楽に全く興味のない方に魅力を伝えるには言葉の力はとても重要だと、勉強してみることにしました。結果、披露宴を中心に司会のプロとしての活動も11年続いています。今では、パフォーマーとしてのわたしらしさでもあると思っています。


そして、市民政治活動について教えてください。

市民政治活動に関わることになったのは、八高の同期の元市議会議員のお姉さんを選挙で応援させていただいたことがきっかけです。私自身が42歳で出産し、さまざまな不自由を体験したことから、“どう生きるか”を考えることに政治は切っても切れないものだと気づきました。そうして応援活動を通して「生活に政治を引き寄せる」という『ふくおか市民政治ネットワーク』の理念に共感し活動を続ける中で代表を務めさせていただくことになりました。現在も「北九州市でのMY助産師制度の制度化」をめざし、ピアニスト、司会業と並行し、活動を続けています。
実は、数年前は一旦音楽も司会業も全てやめて市民政治活動一本に打ち込もうと考えた時期もありました。一方で音楽を手放すことになかなか腹を括れない私もいて。そんな中で、『ふくおか市民政治ネットワーク』の総会の最後にミニコンサートを行う機会がありました。一つの政治団体の集会でもいろんな考えや意見があって、ともすれば分断してしまいギスギスした空気になることも少なくありません。しかし、最後のコンサートでは音楽が一瞬にしてニュートラルな雰囲気にしてくれて。音楽はボーダーラインを軽々と超える力があると改めて実感し、音楽活動は100%お休みにはせずわたしのために残しておこうと。これからもそのスタイルは変わらないでしょうね。


素敵なお話をありがとうございました。最後に当番期である今回の総会への意気込み、久しぶりの同期との再会についての感想などをお聞かせください。


30年のブランクも問題なし!同級生ってありがたい


30年ぶりに合った同級生たちは、オンラインの向こうでも違和感なく調和でき、またみんなが元気でそこにいてくれるだけで『ありがたい』と感じています。本部総会でも司会をさせていただき、関東は二度目の司会となります。本部総会では緊張のあまり自分では納得できる「しゃべり」ではありませんでしたが、とにかく仲間に盛り上げてもらい乗り切った覚えがあります。でも、それがむしろ、「人間らしさが見えてよかった」と評価をいただくなど、昨年の本部総会は11年の司会業の経験の中でも印象に残る会でした。
今年の関東総会は、皆さんにお食事も楽しんでいただけるコロナ前に近い形で開催します。これまでのモヤモヤを吹き飛ばすような明るい会にしたいです。みなさまとリアルでお会いできることを楽しみにしています。



【編集後記】

  • 谷口さんの印象はとにかくまっすぐな方で、すべてのことを楽しめる方だと感じました。そして発信上手。谷口さんのSNSはお嬢さんの成長を楽しむ様子から、「ふくおか市民政治ネットワーク」の活動、関東誠鏡会の進捗状況まで、毎日どんどん更新されています。
  • オンラインを通しての取材でしたが、滑舌といい表情といいさすがプロの司会者。お話もテンポ良く、気がつくと2時間以上取材をさせていただきましたが、楽しくて笑いの絶えない時間となりました。

 

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