五洋建設(株)洋上風力事業本部
西村行雄さん(高44期)


Profile西村行雄さん

1992年 八幡高校卒業(高44期)
1997年 神戸商船大学卒業
五洋建設(株)入社 半年間は山岳トンネルの現場で研修
同技術研究所に配属
2000年 土木プロジェクト部に所属し、海底トンネルの工事計画に携わる
2011年 九州支店に異動 技術提案業務に携わる
2016年 本社に異動
2018年 「洋上風力発電事業本部」のプロジェクトメンバーになる

八幡高校卒業後、神戸商船大学商船学部にて海洋機械管理を学ぶ。大学卒業後、五洋建設(株)に入社。半年の現場研修後、技術研究所で様々なプロジェクトで工事計画・技術開発に携わる。2000年に土木プロジェクト部に移動し、沖縄、北九州(若松/戸畑)、大阪での海底トンネルの工事計画・施工に携わる。2011年より九州支店、2017年に本社に戻り、洋上風力事業本部に配属、風車の土台建設の建築計画に携わる。中間南中学出身。



2022年6月某日、東京・八重洲にて、洋上風力発電の建設計画に携わる西村さんに、洋上風力発電の現状と未来の展望についてお話を伺いました。


「洋上風力発電」とはどんなものですか?

現在の「洋上風力発電」事情について教えてください

洋上風力発電とは、風車による発電を海で行うことを言います。温室効果ガスを発生させない地球にやさしい発電方法として日本でも注目を浴びている風力発電ですが、陸上よりも風の状況がよく、輸送や設置での制約が少なく大型化も可能な洋上風力発電は、効率的にクリーンエネルギーを生み出す発電方法としてヨーロッパを中心に導入が拡大しています。特に島国であるイギリスの導入の伸びは著しく、2020年現在2000本を超える風車が稼働しています。イギリスと同様に四方を海に囲まれた日本でも、2050年のカーボンニュートラル実現へ向けて持続可能なエネルギーとして大きな期待が寄せられおり、さまざまなプロジェクトが計画されています。


「洋上風力発電」プロジェクトでの西村さんの役割は何ですか?


洋上風力発電プロジェクト導入状況及び計画(経済産業省HPより)



洋上風力発電設備は、主に風車とそれを支える基礎(土台)部分で成り立っており、風車の基礎を海底に固定する「着床式」と、海上に風車を浮かべる「浮体式」の2種類があります。我々が携わっているのは、「着床式」の建設です。その中で私は、建設工事に向けた計画、特に建設工事に使用する機械や作業船に関わる計画をしています。日本の洋上風力発電事業が本格的になるのはこれからです。日本より技術が進んでいるヨーロッパの技術を取り入れながら導入が始まっている状況です。


西村さんと洋上風力発電の関わりについて

元々、エネルギーに関わる仕事をされていたのですか?

いいえ。今回のプロジェクトに関わるまでは、エネルギー部門とはほとんど縁はありませんでした。それまでは、海底トンネルの建設や公共事業の入札の際に独自の新しい技術を提案する業務に携わっていました。この業務に関わることになったのは、社内で新規に洋上風力事業本部を立ち上げ、洋上風力事業へ本格的に取り組むことになったことと大きなプロジェクトが地元・北九州で始まることを知り、参加したいと思ったのです。単身赴任だったこともあり、北九州の家族に会える機会が増えることも魅力のひとつでした。



不安定な水上工事も安定して作業を行うことができるSEP船


五洋建設に入られた理由は何ですか?
大きなプロジェクトに参加したかったからですか?

五洋建設へは、教授から『西村は、メーカーで細かいことをするよりもダイナミックな建設業がいい!』と紹介され入社したのですが、就職活動時はただ「モノづくりをする会社に入りたい」というくらいの考えでした。面接で志望動機をはっきりいうことができず、人事担当の方に怒られた記憶があります。ただ、昔からモノづくりは好きでエンジニアになりたいという思いは強かったので大学では機械を専攻、船に関わるモノづくりに興味があったことから神戸商船大学に入学しました。今思えば、五洋建設が海と深く関わっていることにも魅力を感じていたのかもしれません。


日本の洋上風力発電の「今」、そして未来の姿とは

どんな課題、苦労がありますか?
洋上風力発電を通してどんな未来になってほしいですか?

洋上風力発電設備は、水上に設置するため陸上よりも頑丈な作りにする必要があります。工事も当然水の上で行うため、風や波による船の揺れをなくし効率的に作業できるSEP船(Self Elevating Platform:自己昇降式作業台船)という作業船を使うなどかなり特殊なもので、費用はもちろん高度な技術が求められます。しかし、現時点では、日本の洋上風力発電はヨーロッパに比べて30年ほど遅れているため、ヨーロッパの機材や技術に頼らざるを得ない状況です。また、日本とヨーロッパでは自然環境(風や海底の高低差)も違いがあるため、日本独自の技術開発も必要です。私自身で言えば、資料が全部英語であるため、読むだけで大変な苦労です(笑)。とはいえ、コツコツと実績を積み重ねていけば10年後には機械も技術も全て「Made in Japan」になれるはず。今、自分たちが「先駆者」としてこの場にいられることには誇りを感じています。環境に優しくコストパフォーマンスに優れた洋上風力発電を、未来に残していけるよう、頑張っていきたいと思っています。


興味深いお話を本当にありがとうございました。
最後に当番期である今回の総会への意気込みをお聞かせ下さい。

昨年末、黒崎で誠鏡会総会後の44期懇親会に参加しました。久しぶりに懐かしい面々と会えて、普段感じることができない楽しさと刺激をもらえた気がします。こうしたつながりは、職場仲間に聞いても、あまり例がなく、非常に貴重だと思いました。歴史ある八幡高校だからこその会だと思うので、同窓生の皆さん、懇親会には積極的に参加して交流を深めましょう。



【編集後記】

  • 西村さんは高校時代はラグビー部で活動。食欲旺盛でお弁当は午前中に完食、昼は学食&クラウンパン、放課後はつる商店で買い食いをしていたそうです。久々に懐かしい名前を聞きました。
  • お父様がエンジニアだったこともあり、モノづくり好きは筋金入り。なんと小学生の時には自転車を分解し、組み立ていてたそうです。
  • 建設のお仕事をしていて心に残っている出来事は、携わっていた沖縄の海底トンネルの開通後、那覇空港からのタクシーで運転手の人に「このトンネルができて便利になった。トンネル抜けた後の景色が好き」と言われたこと。人の生活に直接関わるインフラの仕事のやりがいを覚えた瞬間だそうです。

 

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