毎回、同窓生の住む街を取材しておすすめのスポットをご紹介している「住めば都」ですが、新型コロナウイルスの影響により取材を控えています。今回は特別企画として、筆者の住む「向島」の見所をご紹介します。花柳界だけでない向島に、新型コロナウイルスが落ち着いた際にはぜひ散策に訪れていただければと思います。

【案内人】高47期 伊東努

花柳界のイメージが強い向島ですが、昔ながらの街並みや様々な由縁のある場所が点在する閑静な住宅街でもあります。一方でスカイツリーが開業してからの8年でマンションが林立するようになりました。毎年、7月の最終土曜日にはすぐ脇を流れる隅田川から花火があがり、9月の中旬には牛嶋神社・三囲神社のお祭で街が活気づきます。向島に住み始めて10年。スカイツリーから歩いて10分程に位置し、交通の便もよく自然も多い向島生活を楽しんでいます。

神社仏閣を向島から厳選してご紹介!

本所地区(墨田区の南半分)の総鎮守で、発祥は西暦860年という「牛嶋神社」。由来をたどれば、かつてあたりが牛の牧場だったそうで、狛犬ならぬ「狛牛」や、撫でればご利益があるとされる「撫で牛」など、牛に纏わるものをたくさん目にすることができます。明神鳥居の両脇に鳥居を構える大変珍しい「三輪鳥居」もお見逃しなく。


-牛嶋神社-


牛嶋神社を囲むように広がっている隅田公園は水戸藩主徳川家下屋敷跡。広大な敷地の中には日本庭園や芝生広場があり、庭園内にあるひょうたん池にはスカイツリーが映ります。甲羅干しする亀や優雅に泳ぐ鴨を眺めていると、喧騒を忘れのんびりとした時間を過ごすことができます。


-隅田公園-


平安時代初期の発祥とも言われている「三囲(みめぐり)神社」は、囲の字が「井」をかこんでいることから「三井を守る=三井家の守護神」とされていて、境内には2009年に閉店した三越池袋店のライオン像もあります。
「隅田川七福神」の恵比寿と大黒天も祀られていますので、七福神巡りに訪れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに三囲神社の隣にある小梅小学校は、あしたのジョーの作者・ちばてつやの出身校です。


-三囲神社-


三代将軍徳川家光ゆかりの「長命寺」には隅田川七福神の弁財天が祀られています。家光が鷹狩りの最中に体調を崩した折、境内の井戸水で薬を飲んだところたちまち回復したとのことで、「長命寺」と呼ばれるようになったそうです。
境内には松尾芭蕉雪見の句碑や木の実ナナの歌碑もあります。向島生まれの木の実ナナ、毎年正月には彼女の振る舞い酒がいただけます。


-長命寺-


知っていると得をする?向島の和菓子屋

花街・向島には多くの料亭がありますが、歴史ある和菓子屋目当てに訪れる人も少なくありません。
住宅街の中に佇む「青柳正家」は昭和24年創業。宮家に献上したという大きな栗がごろごろ入った羊羹や菊の花をかたどった最中など、手土産にすれば喜ばれること間違いなしの逸品が有名です。


-青柳正家-


また日本で最初の少年野球場「隅田公園少年野球場」のすぐ脇にある「言問団子」は、江戸末期の創業以来変わらぬ造りの上品なお団子の名店。白・黄・赤の三色のお団子とお茶で散策の疲れを癒す人も多いことでしょう。ちなみに隅田公園少年野球場は、王貞治も少年時代にプレーしていたそうです。


-言問団子と隅田公園少年野球場-


そしてなんといってもお薦めは、前述の長命寺の裏手にある「長命寺桜もち」です。創業は享保二年(1717年)。300年以上の歴史があります。大きな桜の葉で包まれたお餅は香り豊か。散策の休憩時にはもちろん、手土産にも最適です。


-長命寺桜もち-


隅田川が桜の名所になったのは徳川吉宗のおかげ?

滝廉太郎作曲の「花」に象徴されるように、春の隅田川沿いは見事に咲き誇る桜がとても綺麗です。
一説には八代将軍徳川吉宗が桜を植えるよう命じたとされ、春には隅田川を挟んで台東区側・墨田区側あわせて約1,000本ものソメイヨシノを楽しむことができます。また、早咲きの桜や遅咲きの桜、二季咲きの桜など、様々な種類の桜も植えられており、珍しい桜を探しながら散策するのもおすすめです。