吉岡桃太郎さん(高41期)


Profile吉岡桃太郎さん

福岡県北九州市生まれ。1994年より台湾在住。
八幡高校卒業後、大阪芸術大学芸術学部に入学。台湾メーカー勤務を経て、作家に転身。学校講師、ツアーコンダクター、観光ガイド、声優など、多数の顔を持つ。中国語と日本語による執筆活動を続ける傍ら、講演会やテレビ・ラジオ番組出演などもをこなし、文字と語りで日本と台湾を伝える、自称日本と台湾の「伝え人」。
添乗員・観光ガイド(以上台湾)、通訳案内士(日本)の国家資格を所有。著書に『桃太郎哈台灣!就是要醬吃醬玩~桃太郎流台湾の楽しみ方』などがある。


吉岡さんと台湾の出会いについて

まずは、どんな人生を送られてきたのですか?台湾に渡られた経緯についても教えてください。

高校時代は、演劇部で演劇三昧の日々でした。3年間で2本の創作シナリオを自作自演で上演し、三年生になってみんなが部活を引退してもずっと居座って、予餞会にまで出演するほどでした。卒業後は大阪芸術大学舞台芸術学科に進学し、アルバイトで舞台の端役やテレビ・映画のエキストラ、劇場の裏方などをやって、大学でも変わらず演劇一色でした。そうした活動を続けていた時に、台湾のプロダクションの方から声をかけていただき、台湾に渡ることになりました。しかし、言葉の壁にぶつかり、二年間ほど語学留学しながら演劇活動を並行しました。留学修了後は、諸処の事情から一旦演劇活動は休止して、現地のパソコンメーカーに就職しました。会社員として働きながらチャンスを伺っていたところ、日本の出版社の記者の方から台湾のIT業界について記事を書いてくれないかとオファーをいただき、それがプロとしての執筆活動のきっかけになりました。また、執筆をはじめたタイミングで大学の付属機関から講師をやってみないかと誘われたこともあり、そのまま台湾に居着くことになったのです。


それから20年余り、どのようにして仕事を広げていったのですか?

IT業界についての記事を書きはじめてしばらくすると、台湾観光協会や日本の出版社から台湾の観光に関する記事の依頼があり、徐々に執筆の仕事が増えていきました。そして、並行して書いていた台湾人向けのブログ(すでに閉鎖)の書籍化の話が持ち上がります。それが、処女作『桃太郎哈台記』(「哈台:ハータイ」は「台湾大好き」の意)で、このときにペンネームを吉岡桃太郎としました。台湾では当時「桃太郎」が日本人男性の代名詞になっていたからです。作家デビューをきっかけに、講演やテレビ・ラジオ出演のお話しをいただくようになりました。さらに『桃太郎哈台記』上梓の際に「桃太郎とめぐる台湾」という日帰りツアーの企画したことでガイドの国家資格を取ることになり、結果としてツアーコンダクターも仕事のひとつに加わり、今に至ります。


左:スタジオでAD事前打ち合わせ
右:福岡の高校で「グローバルの中の日本と台湾」と題して講演


「日台伝え人(つたえびと)」として

現在の活動を具体的に教えてください。

現在の仕事をひとことでまとめると「台湾と日本の物・事を文字語りで伝える仕事」です。「日台伝え人」を名乗っています。
まず、文字で伝える仕事についてですが、台湾にて三冊の著書を上梓し、台湾や日本に関する雑誌やネットのコラムの連載などがあります。内容は台湾の文化に関するもの、日本の文化に関するもの、台湾や日本の観光に関するものが多いです。そして語りで伝える仕事は、大学の付属機関の講師、講演、テレビ・ラジオ出演などがメインで、講演の内容は外国人の目線で見た台湾についてや日本の文化・歴史についてなどが多いです。その他に学校で日本に関する講座や通訳、翻訳の講座をやってきました。ただ、最近は経済や地方再生、国際結婚、青少年向けの夢実現といったテーマでもオファーをいただくようになりました。ツアーコンダクターとしては、台湾のお客様を日本にご案内しています。昨年は明治維新150周年ということで、明治維新ゆかりの地をめぐるツアーを企画し、遂行しました。番外編として、声優の仕事もやらせていただいています。三年前にニュースキャスターとしてドキュメンタリー映画『日曜日式散步者』に声の出演をさせていただいのですが、その作品は台湾のアカデミー賞に相当する「金馬獎」で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しました。


日本の温泉旅館にて宴会芸の紹介


今後の目標について教えてください。

今は活動の中心が台湾・台湾人向けになっていますが、今後は、日本にも活動の場を広げていきたいと考えています。最近は、日本人向けの講演のオファーもちょくちょくいただけるようになりましたので、さまざまな形で日本でも活動できたらと思っています。
さらに、台湾でも文字離れが進んでいることもあり、「伝え人」としての活動も執筆だけでなく、映像にも広げていきたいと考えています。


台湾の達人が語る台湾の楽しみ方

台湾在住24年。吉岡さんを魅了する台湾の魅力って何ですか?

台湾の魅力はなんといっても「人」。人と人のつながりが日本よりも強いし、年功序列なんて考えはなく努力(どりょ)、実力(じつりょ)、人脈(じんみゃ)の「三」があればいろんなチャンスがあるということですかね。それとかつての日本では当たり前だったはずの「家族の絆」「師への恩」「感謝の気持ち」「弱者へのいたわり」が至る所で見受けられる点も魅力に感じています。あと食べ物がおいしいこと。屋台や夜市も台湾を語る上では外せません。
また、柔軟な思考、即決力、マニュアルにとらわれない行動ができる人が多いので、魅力的なサービスや商品が生み出す力があります。日本でもお馴染みになったタピオカミルクティー、コンビニのコーヒー、書店のソファーなども台湾が発祥なんですよ。それと、他民族ゆえか異文化にも寛容で、オランダや日本に統治された時代から文化をうまく取り入れ、新たな台湾の文化として進化させています。そんな魅力に惹かれて台湾に移住する外国人も少なくありません。

では、旅行での台湾の楽しみ方を教えてください。

いわゆる「テッパン」だと夜市、グルメ、足裏マッサージやエステになっちゃうんでしょうけど、建築物めぐりも楽しいですよ。日本統治時代の建物も結構残ってますし、文化財をリノベーションしたカフェやアート空間なども増えてきています。台北は地下鉄が便利でわかりやすいので、移動は地下鉄がおすすめです。路地散策も面白いです。台北ではふらっと路地に入ってみると、ガイドブックに載っていないようなお店や面白い光景に出会え、新旧が交錯する不思議な街です。時間があれば台北の郊外や中南部にも足を伸ばしてもらいたいですね。台中や高雄には最近新しい劇場が出来て、公演がないときも自由に出入りでき、市民の憩いの場になっています。台湾について書いた拙著『桃太郎哈台灣!就是要醬吃醬玩~桃太郎流台湾の楽しみ方』にも詳しく載せています。


興味深いお話を本当にありがとうございました。
最後に当番期である今回の総会への意気込みをお聞かせ下さい。

しばらく八高から遠ざかっていましたが、昨年、我々41期が誠鏡会の幹事となったことで、御縁が復活しました。総会の役員をやっていたクラスメイトが実家に手紙を送ってくれ、それが私の手元に届き、懐かしい人たちと海を越えて語り合えるようになりました。この機会に感謝しています。
今回は、コンテンツの1つとして私のスピーチもあります。どうぞ、よろしくお願いいたします。


正聲ラジオの音楽番組の収録後にMCと


【編集後記】

  • 日台行ったり来たりの毎日ですが、吉岡さんはとても自然体。日本人・台湾人(在住者)両方の視点から見る言葉に重みがありました。
  • 本取材はメールで行ったため、この記事をまとめているタイミングではまだ、筆者は吉岡さんとお会いしていませんが、非常にていねいな対応で、総会当日お会いできることがとても楽しみです。

 

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