小川由美子さん(高48期)


Profile小川由美子さん

1996年 八幡高校卒業(高48期)
2000年 西南学院大学・文学部卒業
2002年 西南学院大学大学院・文学研究科・博士前期課程修了
2006年 北九州市立大学大学院・国際環境工学研究科・博士(学術)取得
2007年 北九州市立大学・特任研究員
2008年 国立大学法人政策研究大学院大学 研究員(のち、助教・非常勤講師)
2010年 MaluCafeオープン
2023年~ 国立大学法人東京科学大学(旧 東京工業大学)イノベーションデザイン機構URA※

※大学や研究機関において、研究者の研究活動をマネジメント・支援し、最大化する専門職

2026年3月某日、平日は国立大学法人東京科学大学のURA※、週末はカフェオーナーと二足のわらじで活躍する小川由美子さんを取材しました。1週間ほぼ休みなしというスケジュールでも、両立を続けるモチベーションの持ち方、好きなことを生涯続けられるコツ、そして関東誠鏡会への意気込みについてお話を伺いました。浅川中学出身。

【Malu Cafe】

小川さんご夫婦がオーナー兼店主を務め、週末のみオープンするギャラリーカフェ。本とアートに囲まれ、自家焙煎珈琲や自家燻製が楽しめます。不定期に開催される読書会や部活動も人気で、本好き、アート好きが集まる知る人ぞ知る、大人の隠れ家となっています。


小川さんについて教えてください。

どんな人生を歩んで来られたのですか?

八高時代は、本と音楽です。居場所は図書館と部室。女の子5人でバンドを組んで、放課後はフォーク同校会の部室に入り浸っていました。階段下の部室では大きな音を出すこともできず、アンプにも繋がずにひっそり練習していた思い出があります。卒業後は西南学院大学文学部国際文化学科で、中国文学を専攻。ここでは、本と映画の毎日でした。趣味と就職率の高さで選んだ進学先でもありましたが、当時は就職氷河期ど真ん中。特に女子は厳しく、新卒での就職は諦めて、興味のあった博士前期課程に進みました。王孝簾研究室では、中国でのフィールドワークを通し、民俗学・社会学にかかる領域で学びました。その後、北九州市立大学の高偉俊教授との巡りあわせにより、今度は都市環境工学の道へ進むことに。西南学院大学に研究員として籍を置きつつ、高研究室で文献翻訳のアルバイトをしながら北九州立大学国際環境工学研究科博士後期課程を受験して、合格。研究室では、建築廃棄物のリサイクルに関する研究を通して「まち」と向き合いました。在学中は北九州学術研究を拠点に、高教授を中心に建築・都市・環境をテーマとしたベンチャー「株式会社ジオクラスタ―」を起こし、同時期に、高教授・白石盛雄氏と共に「NPO法人学研都市留学生支援ネットワーク(FORSNET)」を起ち上げました。後者では、外国人留学生の生活支援、文化交流支援などを行ってきましたが、こういった活動に携わるようになったのは、母が留学生向けのボランティア活動を続けていたのがきっかけです。しかし、その母が倒れ、介護も担うことに。余命半年と言われた母でしたが、たくさんの方に助けていただき、4年半を生きてくれました。研究、起業、介護、あわせて、結婚も重なり、2007年からの一頃は、東京・北九州を月半々で過ごす2拠点生活を送りました。2008年に国立大学法人政策研究大学院大学に移ってからは、垣内恵美子教授のもとで研究員、教員として、文化政策にながく従事してきました。コース閉鎖に伴い、2023年に国立大学法人東京科学大学へ転職、現在も同大学イノベーションデザイン機構でURAとして勤務しています。ここでは、文化、起業、まちづくり、これまでやってきたことを総動員できるようなお仕事をひきうけています。


Malu Cafeについて

オープンした経緯について教えてください。

関東に拠点を移した当初、自宅は大宮でしたが、社会の変化もあり、夫が経営する会社の事務所(新宿)と自宅の両方を維持していくことは負担になりはじめました。「せっかくならコーヒーが飲める場所にしよう!」と、「住める・犬と暮らせる・会社としても機能する」+「飲食を提供できる」物件を探し、1年かけて、大田区のこの場所を見つけました。内見した建物はまるで廃墟のような状態でしたが、御嶽神社から差し込む柔らかい光に惹かれ、「ここがいい」と決断しました。改修にお力を貸してくださったのは、八高47期の嶋田洋平先輩(らいおん建築事務所)です。先輩のきっぱりした指示のもと、床を剥がす、壁を塗る、テーブルをつくるなど、作業の多くを、SNSで知り合った仲間にも手伝ってもらい、2010年のクリスマスにオープンしました。店ができていく様子やメニューの試作品をSNSで発信し続けたことで、興味を持ってくださった方たちが近隣・遠方問わず、訪ねてくださり、順調なスタートを切ることができました。店の名は、亡き母の愛称に由来します。週末のみ営業するというスタイルで、気づけば16年になりました。

他にはない、Malu Cafeらしさってなんですか。

飲食を提供するほか、文藝部、美術部、ボードゲーム部、魔女部、映画部など大人のための部活動を行っています。「装幀家のアトリエ」だった建物、という由来からか、自然と創作活動をする人が集まる土壌ができ、目指していた文化サロンには思いのほか早く近づけたように思います。趣味を介して、たくさんの会話が生まれ、つながりができ、楽しみもふくらんでいます。私自身が小説を書き、本をつくるようになったのもマルカフェでの出会いによるものです。2012年創刊の同人誌『棕櫚shuro』には、芥川賞候補者、他の文芸賞受賞者など、著名な作家も書いてくださるまでに発展しました。文学フリマへの参加や、ブンゲイファイトクラブ(BFC)の打ち上げを開催していただいたあたりから文学好きの方が集まる流れが強くなったように思います。読書会や朗読会、句会、芥川賞待ち会、直木賞受賞お祝い会なども開かれるようになり、ブンゲイ仲間とのつながりは豊かに広がり続けています。


総合文芸誌『棕櫚shuro10』の表紙

今後、Malu Cafe、そして小川さんはどのようになっていくのでしょうか?

「文化サロンを目指す」というコンセプトは変わりませんが、専門家やマニアばかりが集まる場ではなく、珈琲が美味しいから、たまたま好きなものが似ているから、と気軽に集まれるフランクなコミュニティでありたいとも思っています。お客様も実は多様で、店長(犬)やマスター(おじさん)に会いに来る人、北九州出身というだけで誰かに連れてこられる人などもいらっしゃいます。 たいへんなこともままありますが、できる限りここで小説を書き、同じ興味を持つ人々と交流できる現在の形を続けていきたいと考えています。「大学での仕事」「マルカフェでの活動」と両輪で、私の人生が進んでいる気がしています。高校時代の結構な時間を過ごした図書館と、階段下の部室を融合させたようなこの空間は、訪れてくれる人たちと育ててきたかけがえのない場所です。

素敵なお話をありがとうございました。
最後に久しぶりに集った同窓生たちの印象、当番期である今回の総会への意気込みついてをお聞かせください。

「48歳の年に同窓会をやるから」と申し渡された幹事の役割を、持て余したまま当年を迎えてしまい、どうしたものかと思っていましたが、2025年11月には、すばらしいメンバーの働きで、すばらしい総会を持つことができました。2026年関東総会は、「刻め!」を引き続きのテーマに<9月12日(土)>開催予定です。今回の開催地は、北九州ともどこか似た雰囲気のある川崎市。鉄のまち、港湾のまち、そして、音楽や映画のまちをうたう両市のかけはしになるべく、48期が実行委員を務めます。初秋の日に、ゆかりあるみなさまにお集まりいただけるとうれしいです。


【編集後記】

  • MaruCafeではイベントのテーマに沿ったメニューを提供。アートなメニューも人気です。
  • 店長(二代目)のチワワ「まめ」。彼を目当てに訪れるお客様も多いとか。
  • 小川さんの両輪のもう一つ「大学でのお仕事」は、大学発スタートアップ支援活動として、研究成果の社会実装支援、田町再開発事業を兼任。アジア最大級のインキュベーション施設開設に向け、スタートアップ創出からまちづくりまで文化を軸に幅広く事業を展開し、「地域連携においては、北九州市とのかけはしを自称」だそうです。
  • 多彩過ぎる小川さん。彼女を語るにはこのコンテンツではとても足りません。いつか彼女の人生をテーマにした一冊を書いてみたいと思った著者でした。

 

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